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複雑・ファジー小説
- Re: 龍の宅急便。 -Bring Heart to Lover- ( No.15 )
- 日時: 2012/04/03 19:22
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: OHq3ryuj)
- 参照: フリントロック→ボルトアクション推移までの小銃採用。
人だかりの間をすり抜け、時に押し退けて、中心に出る。少し遠巻きに軍人さん達が見つめる中で、独りの若い男の軍人さんが、頭を押さえて座り込んでいた。右手の下に、この軍が正式採用している、両手持ち用の小銃が敷かれている。
——僕の仕事、壊した武器の修理に関するトラブルだ。たぶん。
一応原因の見当を付けた後、僕はジト眼で尋ねてみた。
「どーかしましたか? また銃に襲いかかられました?」
「キリア、それ当たり……クソッ、何ちゅう短気なんだこいつらは」
うぇーい、やっぱ予想てきちゅー。
僕はもっとジト眼になりながら周りをちょっと見渡し、いまだに何だなんだと言い合っている人たちを解散させて、右手の下に敷かれた小銃を抜き取る。場所を移して修理するのも勿体なく、その場で鞄を漁って先がカギ針みたく曲がった縫い針を木箱の中から取り出して、銃身のところに刻まれた印をちょいっと削りなおした。
きっとこれで風によく晒したら暴発はしなくなるとは思うけれども……ううむ。
小銃を返しながら軍人さんにかけた言葉が、思わず怒気をはらんでしまった。
「あのですね……“風霊(ウィドネー)”はナイーブで、しかも力の変化にすごく弱い霊だから、満月の日には南中から次の日の夜明けまで陽光と月光に当てて休ませて下さいって——僕何度言いましたっけ?」
「十回かそこら言われたよーな気がしないでもない」
「不精! あんまり続くとボコボコにされますよ」
流石の軍人さんも何も言えないようだ。何たって僕、これでも修理ごとは得意なんで。
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