複雑・ファジー小説
- Re: 龍の宅急便。 -Bring Heart to Lover- ( No.18 )
- 日時: 2012/04/07 02:57
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: OHq3ryuj)
- 参照: ファンタジーと来たら魔法でしょうやっぱり。
——そうだ、大事なことを言い忘れていた。
ハイリグヴァーン国の乗っている大陸では『万象式』と呼ばれる、ちょっと変わったコトを呼び起こす術が発展している。
実際の原理を説明するのは一冊本が出来るくらい複雑だけど、面倒なところをバッサリ斬り捨てて簡単に言うなら、その場所に存在する「力の塊」に呼びかけ、その力を借り、更に操ることで、人の力じゃとても起こしきれない現象を起こす術、またはそれを起こすための式のこと。
僕の言った“風霊(ウィドネー)”と言うのがその「力の塊」の比較的ちっちゃな塊のことで、風あるトコには何処にでもいるありふれた存在だ。これがもうちょっと大きくなると、もっとご大層な名前がくっついて、存在する場所も存在できる条件も限られてくる。
ちなみに、ウィドネーと同じくらいの規模の別の存在としては、火のある所にいる“炎霊(ファラーメー)”や水のある所にいる“水霊(ヴェッセラ)”とか、土ある場所になら何処にでもいる“土霊(エルデン)”とか、それ以外にもいろんな所にいろんな形で存在している。ちなみに「力の塊」は、複雑な手続きをしない限り不可視。
もう一つ大事なことを。
これ——何故か、人と同じような意志を持っているのだ。
イヤなことをされればイヤがるし、ほめられれば嬉しがる。大事に扱えば信頼していつまでもくっ付いてくれるし、乱暴に扱えばイヤがって離れてしまったり、その人を裏切ってしまったり、はたまたその人をボコボコにしてしまうこともある。僕が軍人さんに懸念したのはそのこと。
ただ、ウィドネーやファラーメー程度の小さな「力の塊」であれば、その機嫌を取るのは簡単だ。
ただ、その「力の塊」がもともと存在していた場所と同じような環境の下にしばらく置くか、満月の月光下に一晩中晒すか、太陽が南中したときから太陽が沈むまで、ずっと日に当てておけばいい。もっと信頼を得たいなら、「力の塊」に向かって話しかければそれだけでもうゴキゲン。
理由は簡単。
「力の塊」が元あった環境下でのご機嫌取りは言わずもがな、太陽は僕たち人間の営みにも関ってくるような凄まじい力を持つ万物の力の最たるものだし、その太陽の光を最大にはね返して光る満月の時は彼または彼女たちにとって一番力が強まる絶頂のとき。
そういうときに自分の力を溜めて休んでおけると言うのは、彼らにとってとても嬉しいことなのだ。そして感謝されたらもう有頂天というワケで。力が小さいだけに頭脳も単純にできている。
——僕は確かに武器の物理的な修理も請け負うけど、基本的にやってることは、不精な軍人さん達に支給される小銃や剣に、さっき僕が刻みなおした『保持の式』と呼ばれる式でとっ付かされている「力の塊」たちのご機嫌取りだ。どうも僕は万物が味方になるような、そんな体質なのだとか。