複雑・ファジー小説
- Re: 龍の宅急便。 -Bring Heart to Lover- ( No.23 )
- 日時: 2012/04/12 21:34
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: OHq3ryuj)
- 参照: キリア君活躍の巻。王様は水を差すのが大好き。
僕がぽけらーっとして王様と王妃様の優雅ですさまじき会話を拝聴していたら、演習場の方で、化鳥みたいな声が轟いた。僕も親方も、王族家臣の皆様方も、皆が一斉にそちらを向く。
高く高く、空に渦を巻くもの——
紅蓮の火柱。
親方は悪魔の形相を一瞬浮かべて、唇を噛み、無言のままそちらに駆け出す。僕は土に刺さっていた隊長さんの短剣を引っこ抜き、保持の印を手早く彫り直して、親方の後について走った。で、何故か王様まで走ってついてくる! ぬぇえいワケが分からんっ! しかも何ちゃ足速いぞこの王様!
真っ先に現場にたどり着いた親方は、腰からあの年季の入った戦場刀を抜いて“水霊(ヴェッセラ)”を集める万象式をものすごく大雑把に地面に書き、それを臆面もなく踵で踏んづけて「集合(ヴェーザメィラ)!」と一声叫び、そのまま恐ろしい勢いで燃え盛っている炎の中に突っ込んで、中で半狂乱になっている軍人さんを思いっきり突き飛ばして自分も炎の渦の中から飛び出す。ヴェッセラのご加護のお陰で親方は無事だ。
で、一方の僕は消火活動。土に短剣を半ばまで刺し、そのまま土にミゾを刻むかたちで、エルデンを集合させる万象式とエルデンに土の動きを僕の意志にそって操作させる万象式を組み合わせて書いて、その上に手を置く。この際汚れることなんかは気にしてない。
「集合と操作(ヴェーザメィラ・ウント・ベディナーグ)」
僕の声から少し遅れて、火柱の周りの土が円形にちょっとばかし盛り上がる。
そして。
僕の意図していない現象が目の前で起きた。
盛り上がった土が一点に集まったかと思ったら一気に高く伸び上がって、いきなりぶっとい蛇みたいになりやがったのだ。そしてソレは根元からトグロを巻いて火を取り囲んだかと思えば、ぎゅっと巻いたトグロを搾って火の渦を消し飛ばし、そのあとはモグラが土にもぐり込むみたいにして土に還ってしまった。
僕ポカーン。軍人さんもポカーン。家臣もポカーン。親方までポカーン。王様だけがひたすらニコニコ。
って、まさか王様……。
「あああ、あの……さっきのは、あの?」
「そうだよ。わたしがやった」
……「そうだよ」じゃねぇぇぇぇぇぇえええええええっ! あっさり言ってのけるなぁぁぁぁぁああああああっ!