複雑・ファジー小説
- Re: 駆け抜けろ、地獄と天国と幽閉された死神〜黒影寮☆劇場版〜 ( No.2 )
- 日時: 2012/03/24 22:33
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
劇場版 序章
とある死神のもとに、手紙が届いた。
内容は『地獄へ強制帰還を命ず。貴様は死神の掟を破ったのだ』と書かれていた。
その黒い手紙を握りつぶした死神は、ふと目線を上げる。その先にあったのは、友達全員で撮影した集合写真。
それをいとおしげに触ると、死神は部屋から出た。
「ぎゃぁぁぁぁぁあああああ!!!」
黒影寮では、今日も悲鳴が上がる。
連休中なので宿題がたくさん出されたのだ。特別クラスともあろう者は、頭がよくては入れないとされていて、ハイレベルな宿題がドーン☆と出される。
1番最初に悲鳴を上げたのは、黒影寮きっての馬鹿・二条蒼空だった。
「あぁぁぁあ……終わらない。宿題が、宿題がぁぁ……」
「テメェうるせぇぞ」
食堂に飛び込んできた蒼空を戒めたのは、黒影寮の寮長である東翔だった。彼の手には難しそうな洋書が握られている。
キラリ、と蒼空の瞳が光った。
「翔! 勉強教えてくれ、つーか宿題やってくれ!!」
「ハァ? テメェ、人を頼るなよ!」
「いや、俺だけじゃないぞ」
蒼空は自分の後ろをクイと指す。
そこには、今にも屍と化しそうな黒影寮の住民が——。
「……そんなに死ぬほどの量か?」
翔は苦笑いを浮かべて全員に問いかけた。もちろん頷かれる。
ガシガシと面倒くさそうに頭を掻くと、翔は洋書を閉じた。
「あ、やっぱダメ? 翔も忙しいもんね……」
「睦月。倉庫にホワイトボードがあったはずだ、それを物質転送しろ。昴、プリントを見せろ。俺はもうやったからな」
「え。見せてくれないの?」
「馬鹿か。見せる訳ねぇだろ、テメェらの為にならない」
珍しい反応だった。
翔は黒影寮きっての超俺様。こんな事を言えば『ハッ。テメェらでやれ、哀れな人間どもよww』とか言って笑う事請け合いなしだったのに。
幼馴染である昴は、翔の事を見つめ、
「……変なもの食べた?」
「失礼だな、テメェ」
翔は眉を寄せて昴に愛用の鎌『炎神』を叩きこんだ。ゴッと音がする。
まぁ教えてもらえるならいいか、と全員は思ったのか、食堂の椅子に授業隊形のように座った。
さぁ、これから黒影寮の特別授業が始まるぞ☆
〜10分後〜
黒影寮の管理人である神威銀は、黒影寮に帰宅した。買い物をしていたのだ。
食堂へ足を踏み込むと、そこは墓地と化していた。
「……皆さんどうしたのですか?」
唯一平気というか勉強を教えていた翔は、洋書を閉じてこれまでの経緯を説明した。
宿題を教えていたら全員脱落しやがったと。
「そ、そうですか……。皆さん、大丈夫ですか?」
愛しの銀が声をかけてもこのざまである。どういう教え方をしたのか、逆に気になるところだ。
銀は買ってきた品物を冷蔵庫の中に入れる。
「今日のお夕飯はチャーハンですよ。他にも何か食べたいものはありますか? スープとか」
「銀」
ハイ? と銀は顔を上げる。目の前にはいつの間にか、翔が立っていた。
何だろう、何をするのだろうと思っていると、翔はいきなり銀に抱きついたのだ。
「?! しょ、翔さん!」
顔を真っ赤にして翔をはがそうとする銀。
だがしかし、男の力に敵うはずもない。されるがままにされた。
「銀、よく聞け。1度しか言わないからな」
「……翔さん?」
銀は不思議そうに目を上げた。自分の名前を呼ぶなんて珍しいからだ。
翔は自他共に認めるほどの女嫌いである。なので、自分の名前なんかほとんど『ビッチ』だったのに。
「俺——銀が好きだ」
突如の告白。銀は固まった。
翔はニッコリとした笑みを見せると、銀の額にキスをする。
「ずっと愛してる」
それだけ言うと、翔は銀から離れて食堂をあとにした。
銀はしばらくポケーと突っ立っていたが、やがて我に返る。今、キス、された?!!
「しょ、翔さんちょっと! いきなり告白って早すぎませんか?!」
銀はバタバタと翔のあとを追いかけて、翔の部屋を開ける。
綺麗に整頓された、モノトーンの部屋。間違いなく翔の部屋だが、
もうそこには部屋の主はいなかった。
「翔、さん?」
銀の声は、翔の部屋へ響き渡った。
返事をするかのように現れたのは、黒い黒い——闇よりも黒い封筒だった。