複雑・ファジー小説

Re: 水車の廻る刹那に【出会いは妖の杜で パート5】 ( No.28 )
日時: 2012/04/05 12:58
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)

第二話 そこは変人の巣窟だった


『あっち行けよ、化け物!!』
『来ないでくれ!!』


 ああ、まただ。また蔑まれる。
 仕方がないじゃないか。俺だって半妖として生まれたくはなかった。

 こんな半端な生なんて、授かりたくなかった——。














「……し、天」


 遠くから声が聞こえた。瞼をゆっくり開けると、長い髪を二つに結び、巫女服を着ている蛍の姿がぼんやりと見えた。


「あ……蛍」


 ああそうか、俺は昨日施設から引っ越してきたんだ。
 朝日が差し込み、だんだんと意識が戻って来る。


「大丈夫? うなされとったけど……」


 心配そうな顔で、蛍が言った。上半身を起こすと、頬から涙が伝い落ちた。落ちた涙は、柔らかい布団に落ちしみを作る。


「あれ……? 本当だ。でももう平気だし……」


 そこまで言いかけて、俺はあることに気づく。


「……って、蛍ぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
「え、今更!?」


 俺の声が、家中に響き渡った。


                            ◆


「騒がしいですよ、天。まあ、気持ちはとても判っちゃうんだけど……」
「紗織ちゃん、年頃の男の子は皆そうなんよ」

 ハイ、と俺の茶碗を出す紗織と、変な偏見を持つ順子さん。
 この少女は影宮紗織。見た目は十六歳ぐらいだが、実は千年以上も生きている『鵺』という妖怪。名探●コナンの世良真純と同じく僕っ子だ。どう言う経緯なのか、俺と同じくこの家の居候らしい。黒い髪を一つに結び、高校の制服の上にエプロンを身にまとっている。こうして見ると、いかにも「女子高生の家事」って感じだ。


「ごめん、まさかそこまで驚くとは思てなくて……」


 蛍が申し訳なさそうに言った。ちなみに蛍も順子さんのもとでお世話になっているらしい。


「あいや、いいんだ、その……」
「あ〜ら、若いっていいわね〜☆」


 ちょ、順子さん。からかうのはやめてください。顔どころか全身真っ赤になっています。
 ふと覗くと、蛍も少し赤くなっている。


「あらら、青春やね〜☆」


 順子さん……。


                       ◆


「じゃあ、学校に行きましょうか!!」


 紗織がバックを持って、自転車に乗る。
 紗織も妖なのに高校に通っている。というか、妖も通える学校らしい。小中高一貫なので、道のりは一緒である。
 前の学校とは違って、ブレザーではなく学ランである。少し息苦しいが、まあすぐに慣れるだろう。


「うん、とっても似合ってるったい!! じゃあ、行ってらっしゃい!!」


 順子さんがそう言って笑顔で見送ってくれた。
 でも、とても違和感がある。何か忘れているような気がする。
 そんなことを思いながら、すぐに学校についてしまった。


                      ◆


「じゃ、僕はこっち(高等校舎)ですから。中等はそっち。靴箱から出たらすぐに職員室がありますからね」
「ありがとう。じゃあ」


 そう言って職員室へ向かおうとした途端、紗織が顔色を真っ青にして止めた。


「あ、そこ踏んじゃダメです!!」
「え?」


 そう言った途端、上から銀色の大きなもの——(水入りの)タライが落ちて来た。
 丁度良く(水入りの)タライは俺の頭に直撃!!


「〜〜ッ!?」


 声にならない痛みと、制服が水でビショビショになる。


「ああ、大丈夫ですか!?」


 紗織が慌てて駆け寄って来た。
 畜生、誰がこんなものセットした!? 水入りのタライなんて、そうとう悪質なイタズラだな!!


「ここ、トラップ実験所で、『立ち入り禁止 入ったら死ぬで』っていう立て札があるんだけど……転校生の天じゃ気づきませんよね」


 前言撤回。俺が悪かったです。
っていうかなんでこの学校に地雷原っぽいのがあるんだ? というか誰が設置した? 何故注意看板がグ●コの脅迫状っぽく書かれてるんだ? おかしくないか? この学校おかしくないか!?
 ……うん、止めだ止め。突っ込むだけムダだ。第一、妖が通える学校という時点でおかしいんだから(というかそうしないと身体が持たない)。



『どっかいけよ、気持ち悪い!!』
『死んでしまえ!! 死んでしまえ!!』




 夕べ見た夢が、俺の脳裏を遮った。

 友達……出来るだろうか。こんな中途半端な俺に。
 そんな不安と期待を持ちながら、俺は中等部へ向かった。