複雑・ファジー小説
- Re: 水車の廻る刹那に【そこは変人の巣窟だった パート2】 ( No.32 )
- 日時: 2012/04/09 19:59
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)
「そ、そしたら蛍と一緒だな!」
「え……?」
ヒナが答えてくれた。
「あの子、両親が居ないんだ。だから、身元引受人は順子さんたちになってるんだよ」
初めて聞いた。何となく両親いないのかなー、とは思っていたけど、順子さんが身元引受人だったなんて。
その時、ふと朝から感じていた違和感に気づいた。
「アレ……? そういや、蛍はどうしてるんだ?」
◆
「——って、何でここに居るんだァァァァァ!!?」
店へ入ると(店と家は渡り廊下で繋がってるんです)、学校に行っているはずの蛍が、店の手伝いをしていた。
「何って……店の手伝いやけど?」
「いや、見ればわかるよ!! そうじゃなくて、学校は!?」
「え、行っとらんよ?」
ガク、とこけそうになりました。——それって、つまり不登校ってこと?
そんな俺の様子にスルーし、蛍は俺の後ろに居るヒナと勇気に声をかけた。
離れの間は、順子さんが入れてくれた緑茶の匂いが香っていた。丸ボーロも一緒に置いてある。
「「——呪いの人形?」」
俺の声と、蛍の声が重なった。ヒナは、コクンと頷く。
話を持ちかけたヒナの家系は、『人形師』という職業についているらしい。
人形師というのは、人形を作るのもそうだが、人形と心を通わせたり、人形に言葉をあげたり、五感をあげたりする術師のこと。中には人の恨みを吸った人形も居るので、そんな人形の心を浄化させるのも人形師の仕事らしい。
そんな四月一日家に、とあるややこしい依頼が舞い込んできた。
「それがねえ、もう最っっ低なのよ。依頼人金持ちなんだけど、祖母から貰った人形ば『古臭い』『気味悪い』って言って、無残に捨てたんだって!! でも、捨てても川に流しても燃やしても戻ってきて……とうとう夜中動くようになったって大騒ぎして、ヒナたちに泣きこんできたのよ」
——だから、呪いの人形ってわけね。
怒り狂うヒナの様子に、気持ちは判らないわけでもない。けど、人形を捨てるのも所有者の自由じゃないか? それに、物を大切にしない若者だって、そこらへんに居るし、めくじら立ててもなあ……。
そう言うと、ヒナは険しい顔で言った。
「人形にだって心はあるんだよ。……とても、繊細な心をね。だから、この場合、誰かにあげるとか、そういうことをしなければならなかったの」
——その表情は、何処か険しくも、哀しく見えたのは俺の気のせいだろうか。
「でも、珍しいなあ。ヒナがそぎゃんこと私に依頼するなんて。何時もなら、パパパパ、って出来るんじゃなか?」
蛍が言うと、ヒナは俯いて言った。
「それが……無理なの」
「え?」
「声を聞こうとしても……聞こえないの。その人形だけ」
ヒナが言うには、人形は結構おしゃべりらしい。例えば、持ち主のことや、世の中のこと、喋る相手がいれば、尽きること無く話すのだ。
ところが、その人形は全く話さない。まるで、口を縫いつけているように。
「よっぽど悲しかったやろか、その人形……」
蛍の言葉に、ヒナは困ったように首を横に振った。
「判らない。でも、このまま放っておくと、どれくらいか判らないけど悪影響を及んでしまうと思う……。
ばっちゃとじっちゃに聞いてみたけど、ヒナ以上の力を持つ人形師は、別の都道府県に居るから……」
「だから、ヒナは蛍に頼もうとしたんだ」
「どう、蛍。依頼、引き受けてくれない? 勿論、依頼料はあるからさ」
蛍は少し考え込むようにして、やがてクスッ、と笑って言った。
「まあ、依頼料も貰えるし、無二で一番世話になっとる親友の頼みだし、してみっよ」
