複雑・ファジー小説

Re: 水車の廻る刹那に【そこは変人の巣窟だった パート3】 ( No.33 )
日時: 2012/04/11 18:51
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)



                             ◆


というわけで、やってきました四月一日家。
 何となく想像していたが、純和風の家だ。しかも豪邸と言っていいほどの。
 松の木を沢山植えてあり、何と池もある。池には蓮の広い葉の下で、錦鯉が悠々と泳いでいた。


「しかし、いつ来ても広い庭だなー」


 同行してきたヤマちゃんが言う。その横で、同じく同行してきた紗織が頷いた。


「四月一日家には、人形作りの依頼も来るからね。雛段も受けたまっているから、結構金持ちなんだよ」


 ヒナはサラっと言って、俺達を客間へ案内した。
 客間はもちろん和室だ。純和風だ。上等な畳に、上等な長い机。仕切っているふすまを取れば、何処まであるのか判らない、部屋の広さ。床の間には桜の絵が書かれた掛け軸がかけてあり、生け花もある。障子を開ければ、広々とした庭が見えた。
 お手伝いさんがお茶と小城羊羹を持ってきてくれた。ピンクの小城羊羹で、外はシャリ、と砂糖で固まってあり、中は柔らかい。


「そしたら、ヒナは例の人形持ってくるね」


 そう言い、ヒナが客間を出ようとしたところをヤマちゃんが止めた。


「何? ヤマちゃん」
「その前に大事なことがある」
「大事なこと?」


 怪訝そうに蛍が言った。


「ああ。ある意味とっても大切なことだ。これを終わらせなければ、例の人形に会っても解決できん」


 ヤマちゃんの真剣な声(今犬の姿だから、表情は良く解らない)に、皆真剣に耳を傾ける。


「それは……」
「それは……?」



 ゴクリ、と唾を飲み込んだ音が聞こえた、その時だった。








































「——————出席を取る!!」





 一瞬の間が空いた。と思ったら、「ダァァァ!!」と、皆一斉にコケた。


「何で出席!?」


 俺は突っ込んだ。


「だって、今メンバー確認してないだろ。私たちは判っているが、活字でしか判らない読者の皆様は、一体誰が居るのか判らないだろうし」
「そいけんがらって二十行も引っ張らなくていいやろ。それに、何気に世界観壊しとる、ヤマちゃん。小説の中に居る人が読者とか活字とか言っちゃいかん」


 ヤマちゃんの弁論に、蛍が冷たく突っ込む。
——だが、蛍。お前も何気に世界観壊してるよ。


「ま、まあ……ヤマちゃんの言ってることも一理あるし、出席取ろうか。ね?」


 ヒナが場をつくろうように言うと、早速ヤマちゃんの出席が始まった。


「んじゃー、乙音 蛍—」「はーい」


 蛍ののんびりな声が客間に響く。ちなみに、出席の順番は五十音順だ。


「影宮 紗織—」「はーい」
「坂田天—」「はい」
「宮副 勇気—」「へい」
「四月一日 雛—」「はーい」
「ダイ君—」「はーい」

「よし、これで全員だな」


 そうヤマちゃんが言った途端、一人だけ抜かして皆一斉に振り向いた。


「……居たんだ、ダイちゃん」
「気配全くしなかったから気づかなかった」
「影薄かったから気づかなかった」
「酷いです皆ァァァ!!!」


 それぞれの反応に、ダイ君はワアアア!! と泣きだした。
 この幼稚園生並みに小さい男の子——ダイ君は、豆腐小僧という妖怪だ。順子さんが経営している店のバイト君である。一応俺と同じく居候。——一応なのは、本人が影薄いからだ。
真っ白い肌に(俺もモヤシと言われるほど白いけど)、ふっくらとした頬。現代風に赤のチェックの上着の下に、黒い長そでが見える。デニムのズボンをはいていて、女の子だったら抱きつきたくなるほどの可愛さだ。——ただ、残念なことに影が薄い。
 未だに泣いているダイ君を、ヤマちゃんが慰める。


「まあまあ、俺はお前が居るの判ってたぞ。——一通り出席を確認して気づいたがな」



 余計なひと言が入ってるよヤマちゃぁぁぁん!!……ヤマちゃんを除く、全員がそう思ったに違いない。——思った通り、ダイ君はもっと泣きだしてしまった。