複雑・ファジー小説
- Re: 水車の廻る刹那に【千年桜 パート3更新!】 ( No.57 )
- 日時: 2012/04/29 21:41
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)
「もっと怖い意味もあるよ。これが、処刑される人の心情とも語られているの」
「処刑?」
「そう。
『かごめかごめ』は、処刑場を囲んだ竹垣のこと。
『籠の中の鳥は』は、処刑されることが決まっている罪人。よく、家柄に囚われた人のことを『籠の中の鳥』って言われるよね。
『何時何時出逢う』は、「何時、何時、出遣る」であり、「(罪人が処刑されるために)いつ(牢屋の外に)出て来るのか?」と疑問を投げかけているの。
『鶴と亀がすべった』は、長寿のマスコットとして知られる二匹が転ぶことによって、罪人の寿命がなくなるという事。
『後ろの正面だあれ?』は、罪人の首を跳ねる人はだあれ? って意味らしいわ。つまり、罪人はその時に亡くなった、ということ」
「「グロ!!」」思わず二人で叫んだ。
いや、何時も無邪気に楽しんでいる小さい子たちがそんな意味の歌を歌っていたなんて・・・・・・!
ある意味、恐ろしいぞ!?
「まあ、わらべ歌っていうは大抵呪歌なんだ。かごめかごめは、大人がやっていた宗教の儀式を、子供が真似たのが発端だっている説があるしね」
「特に、子供はね。生まれて間もない子ほど、あの世に居たっていうことでしょ? だから、神のより近いところに居た加護が残っているの。
その為、知らず知らずのうちに、『言霊』を使っていることも少なくない。小さい頃良くあそこで遊んでいたから、わらべ歌を思い出したの・・・・・・」
蛍の言葉に、皆ははっとした。
蛍自身も、少し顔色が悪くなっている。
そうだ。植物園で遊んでいた子は、皆低学年。わらべ歌で遊ぶのは、大抵それぐらいの子だ。
そんな子達が死んだ人の碑の前でわらべ歌を歌うということは、それは怨念を解き放つ呪文を唱えているという事。
蛍は、言葉は『力』と言っていた。蛍みたいに特殊な力を持たなくても、強い感情を込められた言葉は『力』となる。
それが『正』の感情であれば良いけれど、『負』の感情を持って放たれた言霊はやがて、『凶器』になる。
「まさか・・・・・・場所が場所だったから・・・・・・特に意味を持たない歌が、『負』の感情に染まって・・・・・?」
ここで、ちょっと判らない人に説明しよう。
遊びで行われるわらべ歌を例えるなら、何も書かれていない紙と考えてくれ。『負』の感情を、黒の色水としよう。
その中に、白紙を突っ込んだら、どうなるだろう。
行わなくても判る。真っ白だった紙は、色水によって真っ黒になってしまう。
その状態が、今まさに「わらべ歌が『負』の感情に染まっている」ということなんだ。
「けれど・・・・・・そんな危ないところ、どうして今まで放置していたんだ!?」
そう。そんな危ないところだったら、先生たちが止めるはずだ。何せ、その道の専門家だから。
そもそも、蛍たちだって術師だ。それこそ、目を閉じていても気配で誰かが分かると言うぐらいの、繊細な感性の持ち主たち。全員が術師と言うわけではないが、それでも誰か一人は気付くはずだ。
「今想ったんだけど・・・・・・まあ、何でかあそこは何も無いのに、惹き付ける様な何かがあるとよね」
「確かにな。俺は違ったけど、遊具も無いのに、良く皆あそこで遊んでいた」
「何でだろ。碑があるのに。お墓で遊ぶとか気味が悪くて絶対にしないのに、あの時はそんなの気にもしなかった・・・・・・」
口々に言って、皆が青い顔をした。
皆想像したのか、それぞれ口を堅く結んでいる。
「・・・・・・つまり、誰もその場所が異常なことに気付かなかったという事か?」
その沈黙を、それまで口を閉じていたヤマちゃんが破った。ヤマちゃんも、珍しく険しい顔つきになっている。
「・・・・・・うん」蛍が、震えながら頷いた。
皆が、息を吸い込むのが聞こえた。
今まで全く、そして誰も気付かなかった恐怖。
「オイオイ、何てことだよ。誰も気付かないまま、知らず知らずのうちに儀式が行われていたなんてッ・・・・・・!」
飄々としている勇気が、あまり見せない動揺を見せた。
「じゃあ、早く先生たちに伝えんと!」
「そ、そうだね! メールを・・・・・・」
蛍の言葉に、さっとヒナが携帯電話を取り出した。
ポチポチポチ、と目で追えぬ速さで打つ。
しかし。
「・・・・・・・う、嘘でしょ?」
液晶画面を見たヒナは、それ以上に顔を真っ青にし、呟いた。
「どうした!?」
俺達もヒナの液晶画面を覗く。
その時、予想したくなかった文字が、そこにかかれてあった。
『送信できませんでした』
