複雑・ファジー小説

Re: 水車の廻る刹那に【千年桜 パート4更新!】 ( No.60 )
日時: 2012/04/30 16:59
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)





 何度送信しても、同じだった。どの先生に送信しても、同じだった。
画面は、『送信できませんでした』という文字。
一応、電話にもかけてみた。しかし、「この電話番号は現在使われておりません」と出てしまった。


「ど、どういう事・・・・・・? 何で送信されないの!?」


 ヒナが困惑した。


「そ、そうだ! 学校の電話に連絡してみればいいんじゃないか!?」


 勇気が、期待の視線を受話器に向ける。だが、それはすぐに失望に変わった。
 そこには、既に蛍が電話をかけ、受話器を充電器に置いていたのだ。


「・・・・・・蛍、どうだった」


 ヤマちゃんが勤めて冷静な声で言った。

「・・・・・・今、電話したと。そいぎ・・・・・・」蛍は、落ち着かせるように、一言区切った。









































































「・・・・・・誰も、出なかったと・・・・・・」


「・・・・・・嘘でしょ」呆然とした声で、ヒナが呟いた。
 誰にメールを送っても届かない。誰に電話をかけても出ない。
 そして、学校に電話しても、誰も出ない。


「・・・・・・なあ、蛍。確か、紗織まだ学校に居たよな・・・・・・」


 俺の言葉に、蛍が「ええ」と頷きかけた。


「ま、まさか・・・・・・」


 蛍はそこで、言葉を失った。想像したのだろう。


「まさか、紗織まで・・・・・・」
「・・・・・・断定は出来ない。だから、確かめるしかないだろ」


 そこまで言って、「え? 何? どしたの?」みたいな表情をしていたヒナたちも気付いた。
 ヒナはすぐさまメールを送信した。
 数秒の間が空く。俺達はメールが送信されるまで黙っていた。


「・・・・・・天の予想通りみたい」


 ヒナが沈黙を破る。そして、液晶画面を突き出した。
 そこにはやはり、『送信できませんでした』と記されている。

 それを見て、俺は確信した。











































 ——学校にいた人たちが、危ない目に在っている——!!


「・・・・・・行くぞ」


 ヤマちゃんが、ボン! と青年の姿に変わった。
 何処に、と聞かなくても判る。
 俺達は急いで学校に向った。

























 学校に着くと、ありえないほど静かだった。
 小等部、中等部、高等部の校舎、校庭には、誰も居ない。本当に誰一人居ない。


「おいおい、この化け物学校を丸ごと神隠しかよ・・・・・・」


 勇気が唸った。
 敵が誰だか判らない。だけど、かなり手ごわいだろう。だって、素人の俺が見ても凄い術師や妖の集まりだから。
 校舎を調べ上げた後、問題の植物園の近くに行くことになった。きっと、これには植物園が関わっているだろうから。

 その時、近くで見ただけで、皆が硬直した。

 植物園自体は普通だ。
 スギや松の木々が植えられていて、その隙間から水が沢山入った、ひょうたんの池が見える。

































 でも——この気温は何なんだ!?



 焼かれるような痛い暑さなのに、芯は凍えるように寒い。
 何も怖いものは無いのに、耐え切れないほどの恐怖が襲う。


「うッ・・・・・・!」


 ヒナが、口を押さえた。フラ、と倒れる。
 ヒナは、人形師の為、その闇や心を知るために、精神が繊細だ。その為、大きな『負』の力には弱いらしい。


「ヒナ! 大丈夫か!?」


 勇気が慌ててヒナを抱き起こす。
 ヒナはぐったりと、目を閉じていた。気絶してしまったようだ。汗もびっしょりとかいている。
このまま連れて行くのはヒナにとってよくないだろうと、素人の俺だって考えられた。


「俺がヒナの面倒を見ておくから、先に行ってろ!」
「でも、ここで分かれるのは危険か! 紗織たちと同じように神隠しになることやって・・・・・・」
「いいから!」


 蛍の言葉を、勇気は荒げて掻き消した。


「俺は、こんな弱っているヒナを置いてはおけない・・・・・・・」


 さっきまでの激しい声は、弱弱しい声に変わる。
 俺には、どちらの気持ちも分かった。
 このまま放っておいたら、危険に巻き込まれるかもしれないと恐れる蛍と、ヒナを無理に連れて行きたくない勇気。
 どちらも、身を裂くような感情だ。