複雑・ファジー小説

Re: 水車の廻る刹那に【龍と人の子パート1更新!】 ( No.73 )
日時: 2012/05/17 18:18
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)




 はい、こんちわー。

 何時もは天視点じゃったが、今回からはこの私乙音蛍視点でやらせてもらうったい。



 たった今、天の誕生日が明日(こどんの日)ということが判明されましたったい。




「え、ちょ、どーしてそのこと話してくれなかったい!?」
「いや、すっかり忘れてたし……」





 怒りを含ませて私は言う。
 じゃって、もう少し早く言えばサプライズも出来たのに!!






「もう! 今から誕生日プレゼント買いに行くけん、何が欲しいかゆうて!? 取りあえず、高級品じゃなければ買えるけん! ゲームでも何でも!!」
「……いや、無い」
「無欲じゃなあ!!」




 思わず大きな声で突っ込む。






「……それに、蛍にたかるのも……」
「こー見えても私は術師ったい! それなりに稼いどる!!」






 ああ、もう! 調子狂うったい!
 これ以上ギャーギャー騒ぐと天にも迷惑になるけん、私は立ち上がった。





「判ったったい。だったら、私が天に見合うもの買いに行くったい!」
「え、ちょ!」





 バタン、とふすまを閉めた際に、天の声が聞こえた。






「大丈夫大丈夫! 病人は寝ているのが一番ったい!」



 そう言って、私はプレゼント探しに出かけた。






 …さて、プレゼントは何がええじゃろう?
 服…は、喜ばんじゃろうなあ。適当にフードが付いた服を欲しがるし。靴もまた然り。
 文房具…も、ダメったい。順子さんが沢山買うから。ゲーム…も、勇気が沢山貸してくれるけんなあ…。
 お菓子…も、順子さんが沢山作るじゃろうし…。



「何がええんじゃろう…」





 はあ、とため息をつく。
 …ちゃんと聞いたほうが良かったかもしれないったい。






「…何が、『大丈夫』ったい」







 全然、ダメダメじゃないか。
 大切な友人の、贈り物すら見つけられないなんて。




「……はあ」



 二度目のため息。

 こういうとき、天の本当のお母さんやお父さんが居れば、今までの誕生日のことが判って、プレゼントも余裕で決められるのに……。





「そう言えば…天は、一体今までどんな誕生日を送ってきたのじゃろう……」




 彼は、施設で育ったといっていたったい。
 でも、龍の血がたまに覚醒して、遠巻きにされていたと。




 …私は、自分の誕生日を知らない。
 でも、勝手に誕生日を決めて、皆に祝われていた。






 ……生まれたことを、祝われないって、どんな気持ちじゃろう……?








 …そういえば、と脈絡もなく思い出す。こどんの日は、季節の節目ったい。
 季節の節目は、妖にしろ人間にしろ、良く邪気に当てられるモノが多い。




「…だから、ここの所気分が悪いんじゃろうか……?」





 だったら、花屋に行って、菖蒲の花を買っていこう。
 菖蒲の花は、邪気払いに良く使われるけんね!





「あ、薬局にも行こう。
 だるさを改善する薬、あるかもしれないし!」











 一応、誕生日プレゼントも探すけど。
 天の為に買うものも、買っておこうと思った。









 さて、まず最初に薬局に到着したったい!(花はしおれてしまうから)

「こんちはー!」

 ガラン、とドアを開け、元気良く入ってきた矢先。

「おおおお!! 蛍ちゃあああああん!!」

 十四の男が、私に体当たりしてきました。