複雑・ファジー小説

Re: 水車の廻る刹那に【龍と人の子パート2、3更新!】 ( No.75 )
日時: 2012/05/18 18:17
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)

 
                        ◆

——…オイ。


ん?



——…オイ。



 何?




「起きろ!」
「ひゃあ!」







 耳元で大きな声が聞こえたけん、思わず起きる。
 驚きすぎて、心臓がばくばくと言っていた。









「び、びっくりした……」
「それはこっちの台詞だ!!!」











 相手はかなり怒っている。そんな、怒ることしたと?



ってか、私今まで何してた?




 ——…あ、そういえば私…。
 そうだ、薬局に行っていたったい。薬を貰って、んで、影花さんが持っていた若返りの薬を私にぶちまけて…。
 それで…気絶したんじゃ……。








「ッ!」













 頭がガンガンするぅぅぅ!!! これ、薬の副作用じゃなか!?
 というか、あの薬を全身にぶっかけて、私は平気なんじゃろうか……?

















「オイ! 何時まで俺の身体の上に座っているつもりだ!!」








 その言葉に、はっと気付いて私は下を向く。
 私は、私より小さい男の子を踏み潰しておったと……。







「ご、ごめんね!」









 バッと離れて、相手の顔を見る。









 ——んで、思わず息が止まってしまった。













「……た、天?」
「! な、何で俺の名前!?」
























 ——そう。その男の子は。
 小さくなった、天でした。





「え、」

 えええええええええええええええええええええええええええ!?

























 ……お茶を飲んで、少し落ちついたったい。
 まず、一番大事なことは、私はタイムスリップしたみたいと。


 いや、だって、ちっちゃい天が言うには、この日は2006年五月四日。
 しかも、場所も芝生だったし、どう考えてもタイムスリップったい。




 しっかし……。




「何ジロジロ見てるんだよ」





 この頃の天は私が知っとる天と違て、ひねくれとるなあ(敵意丸出しったい)。
 ……でも。






「可愛いぃいいいいいぃぃぃぃぃい——!!!」
「ゲフ!!」





 あまりの可愛さに、思わず抱きついてしもた。
 いや、だって白い頬はふっくらして、しかも赤みがさしとるんよ?
 それで、ちょっとつり目の目。金髪金目。



 どう見ても、可愛い!!! これで抱きつかないほうがおかしいったい!!





「なななな何すんだよ!!」
「あ、ゴメン」





 嫌がる天を、引き離しました。…ちえ。





「にしてもちっちゃいのお〜!」
「ちっちゃい言うな!! 後どさくさに紛れて頭撫でるな!!」






 いや、だって? 撫でたくなるし?
 あっちではよく天に撫でられるし、今回ばっかりは、ねえ?




 …でも。
 あっちでは撫でたことが無かったから判らなかったけれど、天の髪って、絹みたいで気持ちええんじゃなあ……。








「…ったく、変な奴だな」
「お褒め頂き光栄ったい」
「褒めてないから」




 笑顔で返すと、怒った口調で返されたったい。
…この頃の天は、案外ズバズバというのお……ちょっと苦しいかも(私が)。




「…ったく、アンタ一体なんだよ。妖怪じゃないみたいだし……」
「通りすがりの少女Aです」
「……判った。変を通り過ぎて、変態なんだな」
「またズバって言ったぁぁぁぁぁぁぁ!?」





 …でも、今度ばかりはしょーがないと。
 だって、私の名を明かすわけにはいかないから。


 …本来なら、私はここに居ちゃいけない存在。
 じゃけん、名を明かせば未来にも影響を及ぼしてしまうったい。
 …ちょっと、辛いけどね。変態扱いは。




「…ねえ、君」
「なんだよ?」
「ひょっとして、明日誕生日だったりする?」
「!!」




 天の顔に、驚愕が浮んだ。





「…アンタ、何モンだ?」
「それは秘密ったい♪ で、誕生日プレゼントとか、なんかご希望は無いと?」
「……」
「…無いとね」





 うわあ。
 この頃も無かったとか、どんだけ無欲なの天君や。
 あっちの君が「何も」って答えるから、こっちの君に聞こうとおもたのに……。








「…じゃあさ、探しに行かん?」
「は?」








 ガシ、と彼の小さい手を掴んだ。





「ちょ、ちょ、待った!!」




 顔を真っ赤にする天。手を繋いだだけで顔を真っ赤にするなんて、可愛い♪
 この様子を見ると、初めて会ったときを思い出すなあ。





「大丈夫ったい! きっと、お目当てのものあるよ♪」







 そう言って、私は彼を強引に引っ張った。
 でも、彼はしぶしぶ付いて着てくれる。
 ここは、あんまり変わってないんじゃなあ。






 さあ、いざプレゼント探しに出発!