複雑・ファジー小説

Re: 水車の廻る刹那に【龍と人の子パート5更新!】 ( No.78 )
日時: 2012/05/20 18:40
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)




















 暫くして、やっと私の涙が止まったところを見計らって、一つため息をついた天が言ったったい。





「……ちょっと早いけど、もう誕生日プレゼント貰ったよ。ありがとう」

「……? 私、何にもしてないとよ?」





















 そうったい。結局、お目当てのものは見つからなかったとに……。





















「何言ってんだよ」








 でも、天は。
 本当に満足したように、




























「——アンタが、一緒に居てくれたじゃないか」
















 そして、とても嬉しそうに笑って言った。























「ずっと、願っていた。
 もし、生まれ変わることが出来たら。父さんと母さんが居て、出来れば兄か姉か、妹か弟が居て。それで、沢山の友人が居て。
 ……普通に、笑って暮らせたらって」
「……!」
「……でも、そんなの叶うことは無い。次って、一体何時のことなのか判らない。
 ……だから、傷つかないように、もう一人で生きていきたいって、ずっとそればかり思っていた……」




















 その言葉を聞いた途端、私は思わず天の体を抱きしめた。




























「……えぇぇえぇ!? ちょ、何するんだいきなり!!」










 声が裏返る天。
 それでも、私は抱きしめたったい。
























「……その夢、叶うよきっと」
「……え?」
「叶うよ、きっと、お父さんみたいな人が居て、お母さんみたいな人が居て、姉みたいな人も居て、弟みたいな人も居て、貴方を大切に想ってくれる友だちが、絶対現れるよッ……!」



























 絶対、叶う。叶う日が来るから。
 それは、この日からあの時まで、とても長く感じると想うけれど。





 昭さんが居て、順子さんが居て、紗織が居て、ダイちゃんが居て、ヒナや勇気やヤマちゃん……李忍や陰花さん、雛菊先生……。
 沢山の人が、貴方を待っているから。







 ずっと、待っているから。












 もう貴方に寂しい想いはさせない。
 私も、貴方を待っているから。























「だから……絶対、一人だって想わないでね。周りには、沢山貴方を想っている人がいるって、覚えていてね……!」










「……お姉さん?」












 天の不思議そうな声に、自分の体を見る。
 すると、私の身体は蛍のように、淡く光っていた。







 ああ、タイムリミット?
 勝手にタイムスリップさせといて、勝手にまた私の時代に戻すなんて、どういう了見ったい?











 ……でも、まあいっか。
 大切なモノを、伝えることが出来たと思うけん。








 ポウウウウ……と淡く光る光の玉が、私を包む。
 その時、私の意識はまた飛んでいった。