複雑・ファジー小説
- Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。【新キャラ登場!!】 ( No.101 )
- 日時: 2013/03/02 16:36
- 名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: HtzPaCR.)
「いや、殺すなんて随分物騒ですね。私に敵意はありませんので、ご安心を」
桔梗が狂ったような台詞を言った直後に、窓の外から聞こえてきた声は確かにこう言っていた。——それは、まぎれもなく人間の、女の人の声だった。
てっきり妖怪に襲撃されるとばかり思っていた桔梗はすっかり拍子抜けしてしまい、それから、人間相手に「あの」台詞を言ってしまったということへの羞恥心が沸々と湧き出てきた。
「あ、あのさっきのは……」
思い出すだけで顔が真っ赤に染まってしまうらしい。その次の言葉を口に出せずにいると、見かねたのか、それとも察したことをただ言ってみただけか、とにかく声の主は熟れた果実のようになっていた桔梗に助け舟を出してくれた。
「いいですよ、気にしないで下さい。私のことを妖怪だと勘違いしていたのですよね? 今まで会ってきた誰からも言われたのですが、私の気配は「人」よりも「妖」に近いのだそうで。——ですから、無理もありません」
聞けば聞くほど、人間の女性であると断言できる自信が増してくる。
「寧ろ、感心してしまいました。気配だけで、人か妖怪かを察することができるのでしょう?」
「えっ、はい——って、わあ」
言い終える前に、桔梗の戸惑いの声は驚きの声に変わった。
外にいた——であろうと推測される——声の主が、いつの間にか窓枠に腰かけていたからだ。
桔梗は声の調子から勝手に大和撫子の姿を当てはめていたのだが、彼女の容姿は予想とは反するものだった。
なかなか見慣れない、銀色の髪は、肩のあたりでぴたりと切り揃えられており、それぞれ耳の上で「つんつん」と跳ねている。
全体的に白を基調としたような袴を着ていて、裾の部分に描かれている朱の二重線だけが服装の中で唯一、色を持っていた。
背には使い古した感じが出ているリュックサックを背負っていて、こちらも同じく無地で色を持たない。
彼女はどこか幼さを感じさせるような笑みを湛えていた。
「初めまして、桔梗さん。私、この国の……陰陽師連合のようなところから派遣されてきました、安城有理と申します!」