複雑・ファジー小説

Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。【新キャラ登場!!】 ( No.105 )
日時: 2013/03/06 09:31
名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: IWyQKWFG)
参照: 学年閉鎖…嬉しry)

 有理はそう言うと、今まで腰かけていた窓枠から立ち上がり、桔梗のすぐ近くにまで歩いてきた。
 当たり前のように靴を脱いで手に持ってくれているところからは、彼女の心遣いが感じられる。——ますます好印象を与えた、ということだ。
(わあ……)
 有理の銀色の髪は、近くで見ると一層輝きを増しているように思えた。
 開け放たれた窓から差し込む朝日が、きらきらと反射しては幾筋ものまばゆい光を生み出している。
 桔梗は思わず息を呑む。
 有理にも自身の髪を気にされていることは伝わったのであろう。——「派手な色ですよね」と控えめに笑いながら、人差し指にくるくると髪を巻き付けた。
(この人、きっとモテるんだろうなあ。……私とは違って)
 そんなことを考えていると、有理が唐突に口を開いた。
 桔梗は自らのプライドを守るため——と称しはしたものの、ただ単に意地を張って——驚きをなるべく表情に出さないように、と努める。

「改めて初めまして、有理です。好きなように読んでくださって構いませんので。確認をしたいのですけれど、私が来ることって何方から聞いていたりします?」

「いえ……全然分かりません」
 そう答えたとおり、桔梗には「全く」心当たりがなかったのだ。
 一応自分の記憶の中をあさってみるが、それでも安城有理の「安」の字すら見つけることは出来なかった。
 朝にこうやって桔梗の家にやってきたところをみると、有理は桔梗の警護役を請け負っているのだろう。——勿論、昨晩の会議についての一切を知らされていない桔梗には、彼女が自身の警護役を務めるなんてこと、想像することすらできないのだろうが。
「あの全然気にしないで下さいね、逆に伝えられていたらびっくりしなければいけないのはこちらだったのですから。聞くところによれば、会議が行われたのは昨晩で……しかも深夜までかかったのだとか。情報伝達が遅れるのも納得でしょう?」
 有理はそう言って、先程と同じように微笑んだ。
 桔梗は腑に落ちない感じが残っているものの、そうですね、と渋々頷く。——いや、頷かざるをえなかった。
 彼女の笑顔には魔力があるのではないだろうか。
 「それ」を見るだけで多少の反発心なんかはどうでもよくなって、決断力は鈍らされて——そう思えるからだ。
 そこまで思い至ってから桔梗は、何気ない感じを装って有理の顔へと視線を移してみた。
——依然、彼女の顔には愛らしい微笑みが浮かんでいるだけで、それ以外は何にも映していない。

「どうかしましたか?」

 有理にそう尋ねられて、ようやく我に返った。
(私、なんて失礼なこと考えていたのかな。最近いろんなことが続いたせいで疑い深くなってる……ヤダな)
 考え過ぎだった、ということで折り合いをつけるらしい。

 桔梗の考えも多少は的を得ていたのだが、本人がその考えを捨てた以上、これについての説明は後に回すことにしよう。