複雑・ファジー小説

Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。 ( No.14 )
日時: 2012/10/21 21:48
名前: 藍永智子 ‐アイナガサトコ‐ (ID: w/bUrDOd)

 皆様、お久しぶりでございます!(^^)!
 そろそろ記憶から消えかかっていた智子です。

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 それは、数秒の事だった。
 ——いや、一瞬だったのかもしれないし、もしかすると数分だったのかもしれない。
 最初に目に飛び込んできたのは、パニックになっていた教室の中でただ一人だけ冷静さを保ち、じっとこちらを見つめていた彼女——あやめだった。
 冷静以外の何物でもない、そのつぶらな瞳は桔梗に「本当にそれでいいの」と、問いかけているように見えた。
 その視線をうけ、桔梗の覚悟は揺らいだ。
 今、この行動を起こしたことに理由なんてなかった。ただただ、皆が傷つくのを黙って観ていられなかったから——否、生き残る為に行動を起こしたのだから。
 今の桔梗は、上空何千メートルで命綱をつけずに綱渡りをしているような、少しでも風が吹けば飛ばされてしまう、そんな危うい状況に置かれていた。
 
 でも、それでも——私がやらなきゃ、皆が……!!

 出来ることなら、戦いは避けたい。
 こんな生活、今すぐにでもやめたい。

 ——元の私に戻りたい。

 しかし、それは叶わぬ願いなのだ。たとえこの世界がほろんだとしても、奴等が生き延びてしまえば、そんなこと、意味はない。
 
 次に起こった事は、誰にとっても予測不可能なものであった。

 今まで大人しくしていたあやめが——あの、あやめが——すっと立ち上がると大股で教室を横切り、非常用の扉を開け、外に出てきた。

「あやめ……?」

 あやめは一体、何をしようとしているのだろう?
 その答えを知る者は、ここにはいない。
 桔梗の戸惑いの声を聞いたあやめは、体の向きをこちらに向け、その、まだあどけなさの残った口を開いた。

「—————————。」

「——!!」

 声すら出ていなかったものの、桔梗にはあやめの言っている事がわかった。


——すぐ、終わるからね。


(あやめは何をしようとしているの……?)


 そんな桔梗の疑問に答えるように、あやめは、前へと、妖怪の方へと一歩を踏み出した——。