複雑・ファジー小説
- Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。【参照1400突破!!】 ( No.149 )
- 日時: 2013/07/04 15:21
- 名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: do8LdMvC)
(あーあ、今日は遅刻しないで行けるかと思ってたのに……)
(まあ、まあ。今回のはさすがにどうしようもなかったんだからさ、諦めなきゃ! 私だって頑張ったもん! 珍しく陰陽師らしさ出したりさ!)
(だって、あやめは私のこと護ってくれる、って宣言してたじゃない)
(ふええ、もうほじくりかえさないでよぉ。記憶力悪いんだからさ)
こんなやり取りをしながらも、二人は全速力で走って学校に向かったのだが、案の定間に合っている筈など無くて——授業中の静かな教室に二人で同時に入っていく、という罰ゲームのような苦行を強いられることになってしまった。
*
桔梗とあやめの二人揃って遅刻したことに対して先生から言われる小言にもそろそろ耐えかねてきた頃、ようやく授業の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
瞬間——桔梗は他人の目なんて全く気にせず、ただ鞄だけを引っ掴んで、長い髪の毛を振り乱しながら学校を飛びだした。
何故そこまで急いで学校を後にしたのかは、分からない。ただ、何かが桔梗の胸の中から行動を急かし続けているのだ。
隙さえあらば、ひたすら悪い予感だけが心の中に広がっていく。
何処にいて、何をしていても、自分が見張られている気がする。
今にも妖怪が襲ってくる気がする。
一瞬でも気を緩めてしまえば、また今朝のように、同じように——もしかしたら、もしかするかもしれない。
可能性は完全に否定出来る訳がない、と気づき、また少し恐ろしくなる。零でないのなら、一だって三だって、九十九と同じ備えをしておかなければならないのだから。
(じゃあ、私はどうすれば、良いの)
ふと気が付いて辺りを見回したら、そこは桔梗が初めて妖怪というものに出会った場所だった。
この場所の事なんて思い出したことも無かったのに、足は不思議と此処へ向かっていたらしい。
学校からは数キロ離れている場所だったが、授業終了を告げるチャイムは未だ耳に残っているから、まだあまり時間は過ぎていないのだろう。——ということは、ここまで桔梗は走ってきたのだろう。
そうなのであれば、この胸の激しい鼓動にも、額をすーっと伝い落ちている汗にも、納得できるというものである。
そこは、町はずれの森の中だった。
少し歩けば町中の喧騒に触れられるというのに、濃く生い茂った木々に四方を囲まれているため、そんなざわめきも、それに付き物の人々の気配も、一切が遮断されていて、唯一存在している樹木以外のものは、静けさだけだった。
一度思い出してしまうと、後を追うようにして当時の記憶は蘇ってきた。
昔の事にしては鮮明過ぎるような気がしたが、初めて妖怪というものの存在を知った衝撃もあったのだろうから、それでも当たり前か、と思い直した。
それは、今から約三か月程前へと時間を遡った時の出来事である。