複雑・ファジー小説

Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。【参照百突破!!感謝です】 ( No.21 )
日時: 2012/10/17 20:34
名前: 藍永智子 (ID: qrBpqQ.I)

 一秒、また一秒と経つたびに、静けさは増し、空気はより一層重くなるようだった。
 部屋にある時計がゴーンと鳴った。

「……もう6時だね」

 時計の音が鳴ると同時に、あやめは口を開いた。




「……うん」




 桔梗がかすれた声で返事を返す。


 再び訪れた沈黙——。
 

 落ち着かないのか、桔梗はあやめが掛けてくれていたのであろう布団をもそもそとたたみ始め、それが終わると、必要もないのに何度も髪の毛をとかしたりした。


「——桔梗。私に言うことない?」


 突如、あやめが苛立ったような口調で言った。
 完全に不意を突かれた桔梗は少し動揺したが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「何の……事?」

「……とぼけちゃ駄目。今日、桔梗はお腹が痛くて早退したハズ———だったら、何であの場に居たの?」


「それは……」




「桔梗、あなた——妖怪が見えるのでしょう?」




 ——————!!

 いつもとは全く違った、あやめの口調。
 そのせいなのか、また、彼女が別人のように見えてしまう。



「……な、何の——」


「とぼけないでよ!!」

 怒っている——怒っているはずなのに、あやめの目からは大粒の涙がぼろぼろと、濁流のように溢れ出していた。

「桔梗はそんなに私の事、信じてないの!? 何で何も言ってくれないの!? ——どうして私はいつもいつも、蚊帳の外なの!?」

「あやめ……!?」

「お父さんもお母さんもどうしてよ!! なんで私は——」


「あやめ!!!!」


 桔梗の一喝で、どうにかあやめも元に戻ったようだ。
 さっきまでの動揺が嘘だったかのように、彼女の瞳は、もうしっかりと現実を見つめ、冷静さがあった。

「……ごめん。あと、ありがと……」

 今まで片方で固まっていた針が、反対側に動いた——あやめの様子を見てしまった、桔梗の心はもう決まった。
 さっきまでの迷いは、一切無くなった——。



「あやめ、私——あなたのいうように妖怪が……ううん、妖怪だけじゃない。幽霊とか人じゃないものが見えるの」



 迷って迷った末に決めた結果——あやめに打ち明けるという事。
 
「——でも」

 桔梗には、一つだけ聞きたいことがあった。


「もっと言う前に教えて。あやめも、何か隠してるでしょう?」


 あやめの体がびくっと震えた。
 それには気づかないふりをして、続ける。



「まず、あなたの秘密を言って。——私のは、それからでも遅くないでしょ?」


 そういうと、桔梗は悪戯っぽく微笑んだ。