複雑・ファジー小説
- Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。【参照500突破感謝です!!】 ( No.55 )
- 日時: 2012/11/28 18:26
- 名前: 藍永智子 (ID: 3rAN7p/m)
燐音は、苛立っているせいか棘を含ませるように毒づいた口調で——何度も大きな咳払いをしながら——話を進めた。
この会議は防衛策を決めるものであり、人の「命」がかかっているものだから、私的な感情など交えて話し合いに参加するなどもっての外……の筈だが、その常識を、生憎燐音は持ち合わせていなかったようである。
「さっき指摘があったので、貴方に対してだけ敬語を使うのは止めるわ。せいぜい、あたしの毒舌が健在しているのを確かめて行って頂戴、あやめ」
あやめは、まだ痛む脇腹をこっそりおさえながら、営業用のスマイルでにっこりと微笑み返した。
彼女は、それらをいちいち鼻で笑う。まったく、律儀な人である。
「お父様もこれでよろしいですよね。もう本題に入ってよろしいですか?」
「ああ、頼むぞ」
「ええ」
*
「まずは、星宮の方から今回の事態の説明をお願いします。貴方の家の状況は知っているし、満足な情報が得られるとは思っていないから、安心して話していいわよ」
進行役としての言葉と、精一杯の皮肉が込められた燐音の言葉を軽く流してから、あやめは席を立ち、説明を始めた。
「普段から話す、という事になれていないので、解りづらい説明になるかと思います。もし疑問に思ったことがあれば、その都度、挙手して聞いていただければ、こちらとしても助かるので、宜しくお願い致します」
一旦、言葉を切る。
「今日から丁度78日前、星宮の担当地域内で、一人の女子中学生が突如として妖怪に襲われました。彼女の名は——もう知っていると思いますが——彩蓮桔梗、と言います。「妖怪を見ることができる」という体質である以外、これといって特別なわけでもない、ごく普通の人です」
さあこれからが正念場だ——と、あやめは腹を括った。