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複雑・ファジー小説
- Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。 ( No.90 )
- 日時: 2013/01/20 19:37
- 名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: SSpjm3XS)
昼間の賑わいもすっかり影を潜めてしまい人気の無くなった、真夜中の夜とは落ち着くものである。誰かの目を気にせずにすむことほど気が休まる時は無いからだ。——月輪家を後にしたあやめは、そんなことを考えつつ家路を急いでいた。
真夜中のくせしてアドレナリンを分泌し続けている脳には不思議と高揚感があって、今はあれだけ望んでいた布団に潜り込んだとしても寝付ける自信が皆無だ。
それに、どれだけ睡眠時間が削られようと明日は絶対に学校に行かなければならないのだ。
この仕事を引き受けた時は桔梗を案ずるあまり他の心配点など頭に入ってこなかったが、それにしても眠気の心配をするようになるなんて、思ってもみなかった。
中途半端に眠ったせいで眠気を引きずり、気が付いたら授業中に居眠りをしてしまっていた、なんていうことはあながち有り得ない話でもない。——実は学級委員長を務めている真面目ちゃんでもあるあやめは、考えるだけで恐ろしくなってきたので、それより先に進もうとした思考は無理やり停止させた。
(ま、こんなくだらないこと考えているなら全速力で走った方が良い、ってことなのかにゃ)
運良くも、今は町中の誰もが夢を見ているような時間帯——つまり、「多少」恥ずかしげな行動をとっても誰かに目撃される心配はないということだ。
よーい、と心の中で呟いてからピストルが鳴らされる瞬間をイメージする。
(どん!!)
真夜中に開かれた参加定員一名のひっそりとした運動会。
ゴールにたどり着いた——古びてがたついている星宮家の門を開いた——のは、それより僅かに後のこと。
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