複雑・ファジー小説

Re: MARIONNETTE 〜蒼の翼〜 ( No.10 )
日時: 2012/05/04 14:11
名前: ナル姫 (ID: vtamjoJM)

*戦いのはじまり

い…怒りに任せてこんなとこ来ちゃったけど…ぼ、僕が今やっていることって、とんでもなく常識外れなことなんじゃ…?何か城内は有り得ないほど静かだし…。何だよ定行…大殿への批判で埋まってるんじゃないのかよ…。…てゆうか本当、何でこんなに静かなんだ?しかも大殿の陣羽織、何か物凄い量の血が付いてたし…。そういえば、成実様の陣羽織もそうだった…。いや、それだけじゃない。兵のみんな、すごい量の血が付着していた。

…まぁ、後で分かるだろう…。



僕は一応客間に連れてこられた。

「金田城城主、金田哉人殿の次男、蒼丸…。まず問いましょう、一体如何なさったのです?」
「…僕は、戦国を恨んでなどいません。…しかし、何故大殿は父上と兄上を守って下さらなかったのですか?」

大殿の表情は変わらない。少し額を掻いて、片倉様を見た。それを感じ取った片倉様が口を開く。

「最前線の兵はいくら殿でも守れないものです」
「じゃぁ何で最前線に出したのです?」

僕の目付きは、きっと鋭いものなんだろう。生意気な、と思われても仕方ないほどの。

「…蒼丸殿、貴方のお父上と兄上が最前線に出なければ、他の者が出ていました。そうすることによって、貴方のように怒りに駆られる他の者が出てくるのですよ」
「っ…!」

駄目だ…口ではとても勝てない。…でも、あれなら勝てるだろう。何で自分で謝りに来なかったのかなら…。

「じゃ、じゃぁ何で、成実様に謝りに来させたのです!?」

片倉様は少し笑った。

「蒼丸殿。貴方がもし城主で、自らが失態を犯したらご自身で謝りますか?」
「そんなの知りません…僕は城主になったらなんて考えられませんから」

そう言ったところでハッとした。僕の負けだ、と。
片倉様の笑顔が、何だか不気味に見えた。

「その通りです。分かっているなら、口出しはしないようにお願いしますね?」


悔しい…。悔しくて仕方ない。なんて馬鹿なんだ、僕は…!何も言えずに、米沢城から出された。

それに結局、大殿の声は少ししか聞けなかった。結局こうなるなら、大殿、自らに言い訳をして欲しかった…。

『…だから、父上と俺の夢はお前が叶えてくれないか?』
『操り人形にならない?』

ここに来て、父上と兄上が死んだという実感がわいてきた。あぁ、もういないんだ。もう、僕は一人なんだ…。

「っ…うっあぁ…。」

ポトポト落ちる雫が、妙に暖かい。

「父上…兄、上…」

『お前の幼名は俺が付けたんだ。その、『青丸』っていうのはな』


何処までも蒼い、蒼い空のように─…。


『仕方ないですね』

「兄上…」

僕は、操り人形にはならない。
政宗様の、忠実な駒にはならない…!



僕の、戦いが始まった。