複雑・ファジー小説
- Re: MARIONNETTE 〜蒼の翼〜 ( No.11 )
- 日時: 2012/05/04 14:12
- 名前: ナル姫 (ID: vtamjoJM)
*伊達政宗という人
一人でトボトボと城までの道を歩いていると、後ろから馬の蹄の音が聞こえてきた。
「蒼丸殿!」
「?か、片倉様!?」
「いやぁ、良かった。貴方に言い忘れていたことがありまして…」
「え…」
「覚悟は出来ておられますよね?」
「何のです?」
「城主としてのです」
……………え?
「え?」
「えって…当然でしょう?哉人殿と哉家殿がお亡くなりになられたのですから」
僕は思わず膝をついた。そうだ…そうだった…。一体僕は何を考えていたんだ。父上と兄上が死んだなら、城主は自動的に僕になるじゃないか。
「そうだった…」
「しっかりなさってください」
片倉様の脱力した声が骨身に刺さる。しっかりしてなくてすいません。
ここで、聞いてみよう、と思った。あの異常な量の血のことを。
「その…片倉様…」
「?はい?」
「あの…血はどうしたんですか?あんなに付いているなんて、普通じゃないですよね?」
片倉様は、あぁ、と呟いた。
「貴方にも話さなければなりませんね」
片倉様は一息ついて、言った。
「我ら伊達軍は、小手森城の人間を、全員殺したのです」
「…え…?」
「殿のご命令。戦闘員と非戦闘員、更には犬や猫、馬や鶏まで、分け隔て無く全て殺せとの事でした」
「だからあんなに血が…」
やっぱり、あの人は狂ってる。普通じゃない。恐怖で家臣を統一するつもりか?いや、それにしてもオカシイ。大器の人、だ。あの人の判断はいつも正しいような気がするけど…。
「そんな…」
「こんな世の中、何があってもおかしくないですよ」
あの人だって、人だろう?
僕の何も言えない様子を見た片倉様が言った。
「殿に、質問に答えて欲しかったですか?」
いきなりで驚いたけど、答えた。
「…はい…」
「…無理でしょうな」
「そうでしょうね。僕みたいな人間が…」
「いえ、そうではありませんよ」
「?」
「…殿は口下手で、自分の心の内を素直に言えず、人と話すことが苦手なのです。大変不器用な御方なので、親しい者でも、中々声を聞けないほど」
さっきの片倉様の笑顔は、怖かった。今の片倉様の笑顔は…。
「殿のこと、あまり誤解しないでくださいね?」
不器用な弟に手を焼いている、兄のような顔だった。