複雑・ファジー小説
- Re: MARIONNETTE 〜蒼の翼〜 ( No.12 )
- 日時: 2012/05/03 15:24
- 名前: ナル姫 (ID: 8TfzicNZ)
*悲劇の幕開け
「申し上げます!最上様より祝いが届きましてございます!」
「申し上げます!田村様より祝いが届きましてございます!」
「申し上げます!二階堂様より…」
___
「疲れた!!」
「辛抱して下さいませ蒼丸様」
「たかが城主になるくらいで…」
「大殿の時はもっと凄かったんですよ?」
「大殿と僕は違う!」
我ながら子供臭い、と溜め息をついた。その時。
「おー蒼ー!元気かぁー?」
「!?し、しししし成実様…!!?」
「ん?どうした?」
「な、何故此所に!?てゆうか前と全然違うんですけど!?」
「あ?あぁ…前は梵天(政宗の事)に厳しくって言われたからなぁ」
「大殿が…」
「ま、実際は言葉選びが出来なかった梵天を代弁した小十郎から聞いたんだけどなぁ」
僕は脱力した。何なんだこの人は一体…いや、そんな事思ってはいけない。こんなお気楽な人でも大殿の側近の一人、しかも従兄弟様なんだから。さらに言えばこの人は『武の成実』の二つ名を持つ猛将。馬鹿にするなど出来ない。
「ま、俺達の間では固ッ苦しいの無しな!」
「大殿に怒られないんですか…?」
「へ?あぁ大丈夫大丈夫〜!彼奴無口だし、目付き悪いから何時も怒ってるみたいだろ?」
僕は悪いと思いつつも、遠慮がちに頷いた。
「でも彼奴、実際は人の怒り方すら知らねぇんだから、心配要らない!」
成実様の笑顔は眩しかった。太陽の様な明るい笑顔。無口、無表情の大殿とは大違いだ。
「あ、そうだ蒼」
「はい?」
「お前もう城主なんだから、梵天の事は『殿』で良いんだぞ?」
「え…」
「心配要らないって!」
___
成実様が金田城で笑っていた時、米沢—…。
「殿、畠山が降伏してきました」
「許さん」
「かしこまりました」
「殿は許す気は無いそうです」
「そんなっ…!再度、お取り次ぎをお願いします!!」
今回の小手森城の皆殺し作戦により、殿に恐れをなした畠山義継が降伏を申し入れた。しかし殿に、畠山を許す気は無い。畠山と面会していた伊達実元(政宗の叔父)様は、ご隠居様(政宗の父・輝宗)を頼った。ご隠居様は畠山の降伏に、条件を出した。
それは、伊達家の悲劇の幕開けだった。