複雑・ファジー小説

Re: MARIONNETTE 〜蒼の翼〜 ( No.15 )
日時: 2012/05/04 14:16
名前: ナル姫 (ID: vtamjoJM)

*輝宗の最期

畠山の降伏に当たって、ご隠居様は条件を出した。その内容は、杉田川以南、油井川以北の地を没収し、両川に挟まれた二本松を中心とする五ヵ村のみ領有を認める。そして嫡男の国王丸を伊達家の人質に差し出す事だった。余りに大きい領地の没収に、畠山義継は初め納得がいかなかったが、命が惜しかったのか、降伏条件を認めた。

「…殿(政宗)にしては珍しいな」
「?何が…でしょうか?」
「殿の行動だよ。口数が少ない殿が、条件を押し通すなんてな」
「…珍しい、とは違いましょう。芯が強い…そう申しましょうか?」
「定行…」
「蒼丸様、無論、貴方様も…」


___



—宮森城

「義継か?一体何の用だ…?」

義継は、成実様と留守政景様(政宗の叔父)の守る宮森城まで、殿に取り次いで下さったご隠居様に礼を申しに来たのだった。普段は館山に住んでいるご隠居様は、今は宮森城にいた。

「成程、会ってやろうではないか」
「しかし…」
「何、何の事はない」

この油断が、いけなかったんだろう。


___



「過分なおもてなし、身に染みておりまする」
「いや、当然の事じゃ」

ご隠居様が微笑んだその時、いきなり義継がご隠居様の胸ぐらを掴んだ。

「貴様!」
「何をする!?」
「近づいてみろ!こ、こやつがどうなっても知らぬぞ!」
「貴様っ…!」

義継は伊達領と畠山領の境となる、阿武隈川まで来た。この事は直ぐに殿にも伝わった。この時ばかりは、流石の殿も叫んだらしい。直ぐに馬を出せ、と。直ぐに阿武隈川に向かう、と。

少しして、殿や片倉様が到着した。僕も、金田城から阿武隈川に向かっていて、ちょうど同じくらいに着いた。

「ちっ父上…!」
「…!政宗っ!!」
「義継!何の真似じゃ!?」
「お前の事など信じられるか!好きな様にはさせぬ!」
「貴様っ!!」
「殿!いかがなさるつもりですか!?」

家臣の言葉には答えない。その代わり、過呼吸になるんじゃないかという程、息が荒かった。

「何をしておる政宗!早う撃て!!」
「父上…。」
「このままおめおめと二本松に拐われれば、お前は動けなくなる!父が子の足を引っ張るなど、あってはならぬのじゃ!!早う政宗!!早う!!」

殿の呼吸が、普通になった。何も言わない。でも、その代わり、意を決した様に、強く拳を握りしめた。そして、手をあげる。

「鉄砲隊、構えろ!」
「なっ…!?ば、馬鹿な…!血迷ったか政宗!!貴様、自らの父を見殺しにすると言うのか!?」
「そうじゃ、政宗!それでこそ儂の子…伊達の頭領じゃ!!」

中々下らない、鉄砲発射の命令。

「流石儂の倅じゃ…

梵天丸…」


「っ…!」

手を、下ろした。

<パンパンパンパンパンッ…>