複雑・ファジー小説

Re: MARIONNETTE 〜蒼の翼〜 (コメをください ( No.20 )
日時: 2012/05/04 14:24
名前: ナル姫 (ID: vtamjoJM)

*蒼丸と政宗

「う…」
「あ…!殿!」
「儂、は…」
「熱が有ったので、片倉様が寝かせて、それで、えっと…」

上手く説明出来ない。殿の御前だ。緊張する…。

「…あ、布、替えますね…?」

説明を諦めて、額に当てていた布を替えた。沈黙が続く。それを破ったのは意外にも殿の方だった。

「何故助けた…」
「え?」
「…脇差しで急所を刺すことも、首を締めることも出来ように…」

父と兄の仇でも討てば良かったのに、とでも言う様に。僕に謝罪したいのだろうか?
…どちらでも良いだろう、何にしろ僕には殺せなかった。

「殺せません…」
「…?」

政宗の、熱で虚ろになっている瞳が、僕を見つめた。

「貴方を討てるほど、僕は大きな人間ではありませんから」

薄く笑って見せた。

「それと…片倉様や成実様が何も言わずに部屋を出たので…何か、信頼されている気がして。それが嬉しくて」

又少し沈黙。殿のお顔は見ていない。どんな顔をしているのか、知るのが怖い。何時も通りの無表情?嘲笑っている?馬鹿にしている?
怖いけど、見てみた。

逃げてばかりでは駄目だ。殿に意見出来るようになるには、殿とちゃんと向かい合わなきゃ。

「…?」

全然、怖がることなかった。こっちが驚く位、キョトンとしていた。

「殿…?」
「…小十郎が…?」
「は、はい…。」
「…そう、か…。…あぁ、成程…」

えぇぇ…?な、何この人…!?怖いんですけど?

「主に儂は殺せなんだ…」
「そう、ですけど…」
「…哉人の子じゃな」

父上…?

「え…?」

僕が聞き返すと同時に、片倉様が戻って来た。

「おや、殿。目が覚めましたか?」
「迷惑を掛けた…」
「いえ。致し方無いでしょう?」
「…」
「蒼丸殿、御苦労でした」

片倉様は、何時もの少し胡散臭い笑顔で言った。