複雑・ファジー小説

Re: MARIONNETTE 〜蒼の翼〜 (コメをください!) ( No.24 )
日時: 2012/05/04 14:29
名前: ナル姫 (ID: vtamjoJM)

*右目の挑戦状

『主に儂は殺せなんだ…』

「僕は殿にそう言われる前に、ちゃんと殺せなかったって言ったんです。…なのに、何でそういったのか分からないんです…」

僕は成実さんにそのことを話した。あと、そのあとの言葉…。

『哉人の子じゃな…』

この言葉のことも話した。成実様は腕を組んで、考え込んだ。しかしそのうち首を振る。

「俺には分かんねぇや。…これは小十郎に聞いたほうが良いかもなぁ」
「か、片倉様に!?無理です!!」
「?何で?」
「だって、ぼ、僕みたいな身分の者がぁっ…!」

すると成実様は笑った。そして大丈夫と言う。

「お前はもう城主だろ?俺や小十郎と立場は同じなんだ」
「でも…」

確かに、殿に使える身…そういう大きな意味では僕は成実様や片倉様と身分は同じだ。でも僕はまだ元服も、初陣もしていない子供。殿に意見出来るほどの者でもない。

「…じゃぁさ、俺が聞いてやるよ!」

「……え?」


___



つ…連れてこられてしまった…。金田蒼丸、一生の不覚…。

「さて、如何なさいました成実?」
「蒼丸が聞きたいことがあるって」
「し、成実様!?聞いてくれるんじゃないですか!?」
「知らねぇ?」

騙されたぁぁぁああ!!!
そして片倉様の笑顔が怖い!!
…もう、いいや。諦めて言おう…。

僕は片倉様に、殿の言葉の意味を尋ねた。



「…成程。殿には私が部屋を出た意味が分かったようですね」
「え?」
「私は蒼丸殿を残して、部屋を出ましたね?」
「…はい」
「あれは、貴方に殿が殺せないからです。殿も言っていたでしょう?」
「な、何で殺さないなんて分かるんですか!?僕は脇差くらい持ってるし…」
「貴方の意思とは関係ありません。私はあの部屋の屋根裏に、忍を放っておきました。貴方が殺そうとしたら、忍が貴方を殺す筈。殿にはそれが分かったのでしょう」

なんて人だ…とことん抜け目がない。

「もう一つ、哉人殿の子…という言葉ですが…」

僕は少し身を乗り出した。これが一番気になることだ。

「哉人殿は、いつも戦場にて御嫡男に…哉家殿に言っていました」


『お前は、操り人形になるなよ?もし儂がこの戦で死んでも、殿を恨むな。刀で仇は討つな。

意見できるようになって、殿を見返してやるんだ』


「…父上…」

「尤も、哉人殿は殿に聞こえないように話していたのでしょうが…。殿も知っていたのでしょうね」


今になって、何で兄上があんなに操り人形にはならないぞと言っていたのか分かった。兄上は、ずっと父上に言われてたんだ…。父上の夢を、長い間知ってたんだ…。

何だか、涙がでてきた。

「父上…兄上…」
「貴方は幼かった。…いえ、今もまだ幼い。だから最後まで聞かされていなかったのです。…哉人殿が、死ぬ直前まで」

僕は…何も知らなかった。知っていたら、兄上が『操り人形にならないぞ』と叫んでいたことを、馬鹿にしなかったのに。一緒に夢を語り合えたのに…!

「貴方は、お父上の意思を継ぐきでしょう?」

僕は深く頷いた。
片倉様が少し笑う。

「なら、頑張ってください。しかし、殿は気難しい御方ですよ?」

音も無く、立ち上がる。

「果たして、夢は叶いますかね?」


竜の右目は、挑発的に言った。