複雑・ファジー小説

Re: MARIONNETTE 〜蒼の翼〜 (コメをください ( No.25 )
日時: 2012/05/04 14:30
名前: ナル姫 (ID: vtamjoJM)

*人

殿の体調は良いとは言えなかったが、ご隠居様の葬儀が行われた。ご隠居様の側近、遠藤基信様が、殿からご隠居様の供養のことを全て任せたられていた。

「殿…ご体調が優れぬ中、畠山勢に攻撃と云うのはあまりにも…」
「黙れ」
「お願い致します、暫しこの地にて休養をお取りください…」
「口出しをするな」

基信様も諦めたのか、せめて初七日だけはここに居てくださいと言った。

殿の横顔が、何処と無く悲しそうだった。


___



葬儀は終わり、僕と定行は金田城に戻った。金田城内も、暗い雰囲気が漂っていた。

「定行…今回の事、どう思う?」
「どう、とは?」
「…何か変わると思うか?」

定行は少し俯いて考えた。なかなか答えは出ない。

「伊達軍の進軍が早まるやも知れませぬ。殿は至極冷静な御方でございまするが、ご隠居様は殿にとって唯一の父親…怒りは押さえられないかと」
「…」

でも、何であんなに泣いてたんだろう?僕以上に。自分で殺してしまったから?ご隠居様が大切だったから?

「…なあ、定行。殿は何であんなに泣いてたんだろう」
「…蒼丸様」

定行は僕の手の上に手を置いた。少し笑う。悲しそうな笑顔で。

「人は壊れます」
「…壊れる?」
「はい。人の心は少しの衝撃を与えただけで、あっという間に脆くなり、いとも簡単に崩れさるのです」

定行の真っ直ぐな視線が僕を見詰める。僕は動けなかった。定行があまりに真剣だったから。

「壊れる原因は色々あります。苛立ち、恐怖、快楽…はたまた、周りに影響を受けたのやも知れませぬ。…その中で一番多い原因を、御存知ですか?」

僕は首を横に振った。それを見た定行が、一息ついて言った。


「寂しさです。人は、寂しいと壊れます」
「寂しさ…」

寂しいと、壊れる…。

「蒼丸様はまだ幼い…故に良く分からないやも知れませぬが、いずれ分かるときが来ましょう。…殿は、きっともう壊れかけているのでしょうな…それを必死になって、片倉様や成実様が支えている…私にはそう見えまする」

定行の目は、どうか僕は壊れないで欲しいと言っているようだった。

「私は殿と直接関係があるわけではありませんが、言っておきます。蒼丸様、人は壊れる。殿も例外では無いことを、お忘れなきを」