複雑・ファジー小説

Re: MARIONNETTE 〜蒼の翼〜 ( No.6 )
日時: 2012/05/04 14:09
名前: ナル姫 (ID: vtamjoJM)

*サヨナラの時

戦が始まって暫く経った。まだ父上と兄上は帰ってこない。城の老中達が、哉人様(蒼丸の父親)も哉家様(蒼丸の兄)も無事でおられると良いですなと言う。何だか不安になったとき、伊達家の隠密部隊、黒脛巾が僕らの居城、金田城に入ってきた。

「申し上げます!金田哉人殿、哉家殿、共に小手森城にて戦死いたしました!」
「…!!!」
「何ですと!?殿と、若様が…!!」
「そ、そんな…父上、兄上…!」

『…何か、俺長生きできん気がしてな』

「しかし小手森城は落城、殿は御無事、戦死した兜頭はその御二方のみで…」

僕は黒脛巾の報告を聞かずに、外に出た。それと同時に、金田城の兵達が帰ってくる。先頭に定行、後ろから兄上の側近や、父上の側近が付いてきていた。

「定行…!」
「蒼丸様…」
「良かった…主は無事だったのだな!?」
「はい…しかし…」
「哉人と哉家は戦死致したぞ」

聞き慣れない声がした。声のする方を見ると、知らない人。年は、兄上と同じくらいだろう。百足を思わせる前立ての兜。

「貴方…は…」
「失礼致したな。我が名、伊達五郎成実」
「し、成実…様…!!」

何で大殿の従兄弟様がこんなところに…!?
僕は頭を低くした。

「な、何かご用でしょうか!?」
「我が主、藤次郎政宗のお言葉を伝えに来た」
「大殿の…?」
「来度は、主の父と兄を守ることができず、誠に申し訳ない、との事だ」

その時は何故か、謝られた筈なのに、怒りが湧いてきた。何で守ってくれなかったんだ。何で守れなかったんだ。
怒り任せで、僕は米沢まで走った。それほど距離はない。

「蒼丸様っ…!」

聞こえてくる定行の声も無視して。