複雑・ファジー小説

Re: MARIONNETTE 〜蒼の翼〜 ( No.7 )
日時: 2012/05/04 14:10
名前: ナル姫 (ID: vtamjoJM)

*冷徹な主

「はぁっはぁっはぁっ…」
「きゃぁっ!」
「おい餓鬼!止まれ!」
「なんの騒ぎだ?」
「何処へ行く気だ!」
「そっちは伊達様のお屋敷ですよ!何の用があるんですか!」

何の用が、だと?お前ら庶民には関係ない。訴えに行くんだ。
僕の大切な人を、一度に二人も奪っておいて、代理に詫びを言わせて終わりだと?僕の父上と兄上を守ってくれなくて?

ふざけるな!!!

僕はただ、伊達屋敷まで走った。大殿の居城、米沢城まで。


___



「来度の戦、真、簡潔なる勝ち戦でしたな、殿」

僕は伊達屋敷の門の近くまで来た。門番は僕の顔を見知っていたため、何とか通してもらえた。まだ大殿は門の前にいた。馬に乗っている。大殿に話しているのは側近の片倉様か?
大殿の顔は見えない。だからどんな顔をしているのかが分からず、怖かった。あぁもう、しっかりしろよ僕!一寸足を出して、走って、大殿にモノを言うだけだろ!?
行き渋っていると、声が聞こえた。
片倉様の様な渋い声でもなく、成実様の様な低い声でもない。寧ろ、少し高いと感じられるような…。

「そこの、出てこい」

心臓が凍った。息が切れる。あの御方は…大殿は、僕が居ることに気がついている…。

「出てこい」

どこまでも冷徹な声。感情が一切感じられない。ただ、従えというような。お前は俺に意見する権利など一切ないと、只従えばいいと。そう言っているようだ。

「…貴様、金田の倅か?」
「!!!」

何故だ?何故こっちを見ていないのに分かる!?僕は隠れているのに!見えない筈なのに!

「…儂に言いたいことでもあるか…?」

敵わない。この御方には…。全て、見通していらっしゃるんだ…。

「…はい」

僕は諦めて大殿の前に出た。

「金田城城主、金田哉人が次男、蒼丸と申します」