複雑・ファジー小説

Re: PKK 【PKKとは? って人のために、詳細のせましたー】 ( No.1 )
日時: 2012/04/08 17:30
名前: ゆn ◆Q0umhKZMOQ (ID: vQ/ewclL)

第零幕

「いやああああああああああああ!!」

 【Paranormal ability world】に、女のプレーヤーの悲鳴が響く。悲鳴を聞いたほかのプレーヤーは腐るほどいた。だが、助けようとするプレーヤーは一人として現れない。理由は簡単だ。『対戦相手がPKとなるから』誰も、彼女を助けにいこうとしない。
 PKには、近寄るな。何があっても戦おうとするな。その二つが、このオンラインゲームをやっているプレーヤー達の決まりごとだった。
 PKに捕まり、ギル——ゲーム内の資金——を取られたり精神的外傷を深く、深く刻み込まれれば、二度とこのゲームをすることが出来なくなるのを、彼らは知っていたのだ。

「いや〜、だってよ」

 下卑(げび)た笑いを辺りに響かせる。体中にタトゥーを付ける様に設定し、体も他のプレーヤーより一回り二回り大きな筋肉質なものになっている。白色の奴がいれば黒色もいる。見るからに“悪党”の顔をした男達が女を囲んでいた。
 女の職業は、服装から見て旅人。もしくは、聖人。重苦しい盾や、傷つけるための剣などの武器類、防具類を持っていないのが、その証拠だった。このゲームのPKは、武器を持たない女プレーヤーや、自分達よりも弱い男プレーヤーを狙い、悪事を働く。

「はははは! どんなにお前が泣いたってなぁ、だぁれも助けに来ないんだよ!」

 一人がそう言うと、取り囲む男達も大きく「はははは」と笑う。『誰も助けに来ない』が、決め手になったのだろう。女は項垂れて、流れてくる仮想の涙で目を潤ませ、頬を濡らしていた。
 その様子を見ながら、男達は女の装備品やギル、レアアイテムを取っていく。全ての感覚がリアルに伝えられるこのゲームは、PKにとっては最高のもので、PKに捕まった人間にとっては最悪のものであった。美しい白色の肌を嘗(な)める様に、男達は見ていく。
 それはまるで——

「……貴様らは煩悩の塊か」

 ハスキーな重低音が、PKたちの耳に入る。そのままの状態で動きを止めるPKたちを、とあるプレーヤーは見下すように見る。顔の下半分を、特殊な防具で覆ったプレーヤーの目は、紅(あか)に輝きPKたちの顔を、容姿を、犠牲になっているプレーヤーを記憶していた。

「……俺の縄張りを貴様らのような下衆に荒らされる気は毛頭ない」

 プレーヤーが踏み出した一歩に反応し、PKたちも振り返り立ち上がる。次々と武器を取り出して、攻撃を繰り出す。だが、PKたちは何もされていないのにも拘らず一人、また一人と意識を失いその場に倒れていった。

「……貴様、動けるか。ギルはどれほど取られた。取られたアイテムがあれば言え」
「あ……え……?」

 彼女は、何が起きたのか分からないでいた。
 自分の目の前にいたはずの屈強な男達が、一瞬で目の前のプレーヤーに倒されたのだ。プレーヤーは、たった一歩で目の前に来たように滑らかだった。最初から男達が存在していなかったような……そんな錯覚を浮かばせた。

「取り敢えず、俺のギルを渡しておく。あと貴様はもう街に戻れ。アイテムも渡しておく」

 女に自分の持つ下級アイテムを渡して立ち上がる。
 プレーヤーは手に持つ二つの剣を、仮想の太陽にきらめかしながら立ち去る。

 背中に飛ばされた「アイツ! 伝説のPKKだよ!!」という歓喜の叫びと悲嘆の叫びを受け止めながら、PKKプレーヤーは初級ダンジョンを出て行った。