複雑・ファジー小説

Re: 銀雪の祠 【コメ求!!】【二話更新中!!】 ( No.16 )
日時: 2012/04/21 19:56
名前: ガリュ  (ID: F.VKszn7)




         第二話【二ノ四】
         『命の灯火』

 「ん〜じゃあ、隣に部屋があるから好きに使え。和室だから。」

水季ははいと返事をして隣の部屋に向かった。

水季が部屋の襖をひくと掃除がされていて綺麗な部屋だった。
水季は奥に進み障子を開け、窓を開けると町や田が見えた。
粉雪が風とともに部屋のなかに入ってくる。ヒンヤリとした風が心地よい。
水季は一言気持ちいいと呟いた。

遅れて桜祁達が部屋に入ってくる。

「む、そう言えば水季姫、勝手に抜け出してきたのか?」

右近は気にしながら水季に問う。
水季は即答ではいと答える。

「な、なにぃ!?」

問いかけた右近より桜祁が一番おどろいた。
もしも龍宮城の者達にここが攻撃されたら…と思ったからだ。

すると、右近は九尾狐が周囲にいると言い、開いた窓から飛び出し、玄関で下駄を履き、森に向かっていった。

桜祁は階段を下り、靴を履き外に出ると右近の姿はなかった。

後ろを向くと銀式に水季が跨っていた。桜祁も銀式に乗り、しっかりと銀式の体をつかむ。

銀式は猛スピードで駆け出す。
人の体が千切れそうなほどのスピードだ。

しかし数秒ですぐに森についてしまった。



銀式に乗りながら辺りを見回す。

するとどこからか不気味な声が聞こえてきた。

『…め、人間どもめ。…ほしい、ほしいほしいほしいほしいほしいほし いほしい。まだまだ足りぬ。命を…もっと!!』

そういい終わると、桜祁達は炎に囲まれた。
赤い、紅い、血のような色で憎しみの感情をあらわす炎だった。

すると、上からなにかが襲い掛かってきた。

銀式は炎の檻を突き破り外に出ると、右近が黒焦げになって倒れていた。服と仮面はボロボロで煤焦げていてぐったりしていた。

「な…九尾狐!!貴様か!?」

『その女はもう終わりさ。』
そういいながら炎のなかから紅い目の九尾狐がでてきた。

桜祁が九尾狐に殴りかかろうとすると水季はとめて話し始めた。

「あなたはなにが望みなの?人間を殺すこと?」
『そうだよ…人間は私の仲間を殺した。だからその分人間を殺す。』
「あなたは、生きようとする人間に同情していたはず!!」

 『貴様になにが…わかる!!』

九尾狐が紅蓮の炎をまとい水季に襲いかかった瞬間、
青い電撃がバチィッとなった。

九尾狐はドサッと地面に落ちる。

「あなたは…ただ救いたかっただけだよね?皆を…。」
「ちがうちがうちがう!!」
「人間は本当に醜い生き物よ。でも皆が皆そうだとは限らない。そうでしょ?それが貴方が思っていたこと…。懸命に生きようとする人間に光を与えたかったんでしょう?本当は。」




九尾狐の体は光はじめる。
頬には涙が流れていた。

桜祁はやさしく九尾狐に札をはった。九尾狐は札とともに光りを放ちながら消えていってしまった。

「ん…ん〜。」

右近の姿は元に戻っていた。





  





       「ありがとう。九尾狐。」