複雑・ファジー小説

Re: 【更新しました!】黒魔女と契約者【コメ下さい!!】 ( No.48 )
日時: 2012/11/17 10:37
名前: 灰色 ◆/6D66bp.xk (ID: FtPJcOXY)
参照: 第二章「路地裏は殺人鬼の住家」

 背もたれと赤いクッションのついた椅子、華麗になびく白く薄いカーテン、しわ一つない真っ白なベッド——そんな高級感溢れる客室に案内された私たちは、情報を整理していた。
「確かに情報は情報だけど……」
「大した情報は何一つありませんね」
 調査書はたった紙切れ一枚。あれ程の方ならもっと調べられるだろうに……こちらを試しているのだろうか?人間とは思考が複雑なのでどうも読めません。
 面倒に感じながらも、私は事を次に進ませるため、玲華様に問う。
「いかがなさいます?」
「はぁ……聞き込みでもしようかしら」
「お供致します、玲華様」


 街に出れば、そこは意外にも静かで殺風景な町並みだった。
 景気の良さそうなバーに入ると、中には気の強そうな女性がいた。彼女がここの店主らしいと目星をつけ、私は声をかけた。
「すみません、最近出ている殺人鬼のことをお聞きしたいのですが……」
「知ってるよ。犯人はダニー・ベレッタとかいう男なんだろう?」
「「!」」
 犯人まで割り出されていることに、私と玲華様は驚いた。一般人なのならここまで断言出来ないはずだ。
 ——それとも、それ程までにダニー・ベレッタという男は狂人で有名なのだろうか?
「……何故そこまでして犯人を断言出来るのです?」
「そりゃあ目撃者がいるからねぇ。証人が三人もいるんだ、これはもう確定だろう」
「ご協力ありがとうございました」
 有力な情報を得た。
 私と玲華様は目配せをし、その証人達の住所を聞き出した。

 証人は次の三人だ。
 —— 一人目は老人。ぼやけた目でもその特徴は掴めたらしい。
「全身真っ黒な服に身を包んでいたからよく見えたぞ、金髪の髪が。あとは、血まみれの刃物を持っておったくらいかのぉ……」

 ——二人目は小さな少年。まだ事件の内容が理解出来ていないようだった。
「にゃんこを追いかけてたら、真っ黒い男の人がいたの。目がにゃんこみたいだったよ」

 ——三人目は二十歳程の女性、被害者の遺族でもある。彼女は震えながら証言した。
「夜……どうしても必要な物があって買い出しに行ったら……っ、眼鏡をかけた男性が刃物についた血を舐めていて……!!」


「はぁ……疲れたわね……」
「そうは言っても、質問は全て私が行いましたがね」
「クラウ……!」
 目をキッと上げ、威嚇する猫ような玲華様に、私はつい笑い声を漏らしてしまった。
 玲華様は余計に目を吊り上げるが、それは逆効果。私のツボを突くだけだった。
「ふふ……申し訳ありません、玲華様。少々お言葉が過ぎましたね」
 先程の無礼を庇うように宥めると、玲華様はムスッとしながらも許して下さった。
「——ところでクラウ、」
 突然眉間のシワを増やされた玲華様に、何か問題があることを察する。
「はい、何でしょうか?」
「この街……なんか変じゃない?」
「ええ。そうですね」

 ……やはり、いくら玲華様が普通の人間でもこれくらいのことはわかってしまうらしい。この街が変、というのは何かに圧力が掛かっているような……王などいないのに、何者かに支配されているような感じがする。
 だが、それと事件は関係ないと推測される。もしあるとすれば、犯人の動機くらいだ。
 ……ただし、可能性は低いが。
「ですが玲華様、今回の事件にそれは関係ないかと」
「そう……なら、いいんだけど」
 玲華様は納得していないようだが、仮定もきちんと立てられない今は何とも言えない。
 私は彼女の肩に置いてあったカーディガンを、ゆっくりと取りながら囁いた。
「今夜はもうお休みになられてはいかがでしょうか? 明日になれば頭も冴えますよ」
「……そうね。おやすみ、クラウ」


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2012.05.19