複雑・ファジー小説

Re: 黒魔女と契約者〜私と契約しませんか?〜【コメ募集中!】 ( No.9 )
日時: 2012/11/17 10:17
名前: 灰色 ◆/6D66bp.xk (ID: FtPJcOXY)
参照: 第一章「学院の日常」

 キャサリン様と別れた後、私たちはいつも通り騒がしい教室に来た。中はクラスメイトが五十人程入っている。その割には馬鹿広い教室だが、いつもの授業風景を見れば納得せざるを得ない。
 ——そして、玲華様の席には見覚えのある男性の姿が。ワックスで無理矢理オールバックにした焦げ茶色の髪には、一束の毛が重力に逆らって空を向いている。そんなアホ毛が特徴的な彼は、たびたび玲華様の機嫌を損ねる原因でもある。
 案の定、玲華様を見れば眉間にシワをつくっていた。
 嗚呼……まただ。
「……クラウ」
「えぇ、悠斗様ですね」
 あの方もラフィーさんと同様、懲りませんねぇ。
 私は小さく溜め息を吐いた。
「退かしてきて」
「ですが——」
「早く」
「……かしこまりました」
 玲華様の命令とあれば致し方ない。
 私は悠斗様の所までゆっくりと歩いて行った。
「悠斗様」
「ん? あ、クラウディアじゃん」
「お久しぶりです。……失礼ながら、そこは玲華様の座るべき所。あなたの座席ではありません。お引き取り願えますか?」
 悠斗様は先程の玲華様のように眉間にしわをつくった。
 そして、不機嫌丸出しの低い声で私に疑問をぶつけた。
「玲華の命令か?」
「はい。直ちにと仰せつかったので」
「…………」
 彼はそのまま黙る。
 私も作り笑顔のまま黙った。
 ………………。
 数秒間見つめ合っていたが、悠斗様が俯いたことによりそれは終わってしまった。
 すると、彼は私にあっかんべを——……違う。舌に書いてある印を見せた。
「——来い、ランス」
 そう呼ぶと同時に、悠斗様の隣にもう一つの影ができた。
 ふわりと風が後から来る。真っ白いスーツとそれと同じ髪の色が目についた。
「「!」」
 玲華様も見ていたらしい。後ろで息を呑む音が聞こえた。
 そしてその元凶である男は、いつ見ても気味の悪い微笑みを自身の契約者に向けた。
「何でしょうか、悠斗様」
「しばらくコイツの相手をしていろ」
 コイツ、というのは私。
 命令を受けた彼は私を見て、ますます笑みを深くした。
 ぞわりと全身の毛を逆撫でされるような錯覚に陥る。
「かしこまりました」
 彼は悠斗様に頭を下げると、次は私に身体を向けた。
「クラウ……久しぶりだね」
「……そうですね」
 出来る限り目を合わさず、始終無表情を貫く。それが私に出来る唯一の抵抗だった。
 だが相手は全く気にしていないらしく、依然笑顔のままだ。
「ハハ、相変わらず僕には無愛想なんだね。魔女同士仲良くしようじゃないか」
「魔女と言っても黒魔女と白魔女は相反する存在ですが?」
「そんなの関係ないさ。僕と君は魔女である前に一つの純粋な魂なのだから」
 彼の口から自然と出てくるキザな台詞に、身体中の鳥肌が治まらない。半径三メートル以内に近づくだけでも寒気立つのに、今の状態は本気で不味い。
 表に出さないよう心掛けているが、さすがにもう出てもおかしくない状態だった。
「……それでも私はあなたとは仲良くなれる気がしません」
「やってみなくては分からないだろう? ほら、ここは一つワルツでも踊ってみよう。ミス・クラウディア、お手を——」
 そして彼が腰に手を回した瞬間、私の何かがキレた。
 ——もう我慢の限界だ。


  *   *   *

私が最も苦手なタイプを具現化したランスww
クラウに嫌われてるけどランスはクラウが大好きです。
2012.04.24

Re: 黒魔女と契約者〜私と契約しませんか?〜【コメ募集中!】 ( No.10 )
日時: 2012/11/17 10:20
名前: 灰色 ◆/6D66bp.xk (ID: FtPJcOXY)
参照: 第一章「学院の日常」

「————せ」
「え?」
「その汚らわしい手を離せと言っているんだ、愚か者。
頭だけではなく遂には耳までおかしくなったのか? ……フッ、それとも人間のように老化か?
その中途半端に伸びている髪は銀髪ではなく白髪にも見える」
「ク、クラウ……」
 玲華様が後ろで私の名を呼ぶが、私は構わず恐る恐る身体ごと離れる白魔女を睨み続けた。
 恐らく、後ろの少女はあの端正な顔を引きつらせていることだろう。普段は私の棘のある言葉が全く効かない目の前の彼までもが不安げな目で私を見つめているのだから。
 ……自分で思っているより酷い顔のようだ。口調が変わっていることにも気がつき、私は深呼吸をして普段通り話し始めた。
「はぁ……何度言えば分かるのですか?
はっきり言ってあなたの言動、行動、少々言い過ぎですが存在が私には不快なものなんですよ」
 長く綺麗なまつげに縁取られた瞳をめいいっぱい開いた彼は、少なからずショックを受けたようだった。今までとは違い、きちんと伝わっているようだ。
「ですから必要以上に馴れ馴れしくしないでいただけますか?
これ以降あなたを消さない自信がありません」
「ク、クラウ……」
「……呼び方は自由ですが本当に…………
 本 当 に、
必要以上に私に近づかないで下さい」
 本当に、を強調して私は言い切った。
 今まで溜めていたものがスッと無くなり、とてもスッキリした。
「は…………はぃ……」
 ……簡潔に言うと、かなり怯えていた。色白の顔は青みを増し、足元を見ればガクガクと震えている。眉毛は八の字を描いていて、思わず笑ってしまいそうになった。
 ——そして、本来の目的を思い出す。私は彼の背後にいる少年の顔を覗き、もう一度言った。
「——という事ですので悠斗様、お引き取りいただけますか?」
「!」
 悠斗様は正気を取り戻したように、俯き気味だった顔を上げた。
「……仕方ねぇな」
 素直に返事をしないのは彼のプライドがそうさせたのだろう。悠斗様は珍しくすっぱりと諦め、白魔女を連れて自分の席へ移動した。
 私は少し離れた距離から傍観している玲華様に、微笑みながら目配せをした。


「全く……久しぶりに見たわよ、あんなあんた」
 堂々と脚を組んだ玲華様はそう言った。
 確かに、口調が変わるまでに感情が高ぶったのは玲華様と契約を結んでから久しいかもしれない。
 先程は呆れてた物言いだった口は、今では反して緩められていた。
「ふふ、あの悠斗まで青ざめてたわ」
「……私、そこまで酷い顔だったのでしょうか」
「今にも喰らいそうな勢いだったもの。……にしても、そこまであのランスとかいうのが嫌いなの? それとも、白魔女が?」
 玲華様は不思議そうに見てくるが、私は反対に何故嫌いにならないのかお聞きしたい。
 だが質問を質問で返すのは失礼にあたるので、きちんと答えさせていただいた。
「白魔女であることは関係ありません。彼自体が生理的に受け付けないのです」
「ふ〜ん……。一応女には人気あって、ファンクラブとか作られてるんだけど」
 確かこの学院の女の三分の一くらいは……、と呟く玲華様に、私は少なからず驚いた。まさか自分の大嫌いな男が学院でファンクラブをつくられるほど人気だなんて思わないだろう。
 ……もしかしたら、長く生きすぎてそういう感覚が狂ってしまったのかもしれない。
 だがこれだけは言える。
「ふふ、人間の女性はあのような方が好みなのですか。私には到底理解できませんね」
「顔はいいし物腰柔らかいし力も高い方だし……そこらの男よりは断然いいでしょ。まるでおとぎ話の王子が出てきたようなものだもの。
……ただし性格はちょっとアレだけど」
 その台詞は、義務教育の終えていない年で言うには違和感がある。というか、最近の子供はいやに現実的過ぎる。そうしているのは現代社会だが、黒魔女である私には関係のない事。
 ……ですが、もう少し素直に育っていただきたかったですね。
「でも、今更変えたところで——」
「気持ち悪いのは変わらないのよね」
「気持ち悪いのは変わらないんですよねぇ」
 台詞が重なると、私達は互いに目を合わせ口角を少しだけ上げた。


  *   *   *

クラウが遂にキレたww
ちょっと男嫌い、なのかな…?
2012.04.25

Re: 黒魔女と契約者【コメ募集中!】 ( No.11 )
日時: 2012/11/17 10:22
名前: 灰色 ◆/6D66bp.xk (ID: FtPJcOXY)
参照: 第一章「学院の日常」

 今日は、週に一度ある実技の授業。生徒の皆様がこの学院で学んでいるのは、普通の勉学は勿論、理事長の命令に従って裏社会の事件の犯人を捕まえたり、悪霊と闘う為の知識を詰め込んでいる。
 つまり、今日はその予行演習を行うという事だ。
 普通の学校だったら体育なるものがあり、私たちが言う実技というものと同じものだ。なので一応移動教室してから授業は開始となる。
 そして移動したのは、普段使っている教室の三倍程の大きさがある教室。そこはとてもシンプルな作りで、置物一つなかった。
 移動した私たちは、くじを順に引いていた。
「こればかりはあなたが頑張らなくちゃね、クラウ。あたしは大人しく護られているとするわ」
「あら玲華様。少し誤解なさっていませんか?」
 ピクリと反応した玲華様は、意味の分からないという表情で私を睨みつけた。
 はぁ……もう契約内容を忘れてしまったのだろうか?たった数年前のことなのに。
 ですがまあ、人間と私の時間感覚は違いますからねぇ。
 半ば無理矢理納得し、私は契約内容の一部を玲華様に教えて差し上げた。
「確かに、私はあなたを死なせないように護ると約束しました。——が、傷一つつけないなどとは言っていません。最終的に命を護ればいいのですから。
その時は自分で身を護って下さいね?」
「……じゃあ命令よ、あたしを——」
「従えません」
「! ふざけないで、そんなの契約違反でしょ!?」
 はぁ、と息を吐き、私は説明を付け加えた。
「私とあなたはあくまでも対等なパートナー。あなたのしもべではありません。私にも拒否権はあるはずですが?」
「…………そうね」
「魔術の使い方は教えたでしょう?」
「えぇ」
 玲華様は右胸の前で拳を作り、その瞳には確かな覚悟があった。そう……その目こそ、私が気に入ったもの。私が彼女を護ることが出来ても、彼女自身も強くならなければ意味がない。
 ふふ……今回の授業では人間同士でも戦ってもらいましょうか。
「クラウ、早く行くわよ」
 私は玲華様が引いた十四という数字を見つめ、その数字が書いてある場所まで脚を進めた。


「——あ」
「…………」
 玲華様が小さく声を上げたのは対戦相手を見て後退りをしたからで。私が黙ったのは面倒な相手であったからで。
 ——つまり、対戦相手は知り合いだった。
「久しぶりだな、クラウディア・トゥルーリ」
「そうですね、スペードさん」
 彼は黒髪を七三分けに固めて、ネクタイを苦しい程に締めている。容姿にも表れている彼の生真面目な性格に何故かため息が出た。
 ……見ているこちらが疲れそうだ。
 建て前として挨拶を交わすと、早くもご指摘が。
「何で二人とも他人行儀なの? もっと仲良くしましょうよ〜。あ、もちろん玲華ちゃんも入れて四人でね♪」
「「…………」」
「アリア、今回はこの二人は対戦相手……そのような事をするべきではないだろう」
「え〜……でもね、ロイ、」
 はぁ……始まった。
 アリア様とスペードには甘い雰囲気が漂っている。契約者との恋路は認められていないのに、尚且つ二人は自覚していないからタチが悪い。これではいつ処罰が下されるのか……こちらがハラハラしてしまう。
 チリーン
「「「「!」」」」
 鈴の音で、私達は思い切り髪を揺らす勢いで音源を見た。
 そして、その中心には実技担当のマダムが。
「これから実技を始める。
一ペアに二本ずつ薔薇を配ったので、二本とも取れた方が勝ちだ。制限時間は三十分。
質問等はないな?」
 私たちは黒い薔薇を、アリア様方は赤い薔薇を刺している。周りを見回すと、チーム……というより種族によって色は異なるようだ。
 室内が何の音も出さずに静まり返る。
 ——無言は肯定。マダムは授業を進めた。
「では…………始め!!」
 黒魔女VS悪魔、半命懸けのバトルはようやく始まった。


next→>>22

  *   *   *

バトルスタート!
描写が難しそう…(^w^;)←無計画((ぇ
頑張ります!!ので、誰かコメ下さい…!
2012.04.27