複雑・ファジー小説
- Re: 【9話更新!】聖使徒サイモンの巡礼【キャラ絵1うp!】 ( No.32 )
- 日時: 2012/05/21 18:25
- 名前: 茜崎あんず ◆JkKZp2OUVk (ID: 92VmeC1z)
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「この町に滞在しているのも聖使徒召集のついでに、不正なナザレの神父を裁いて来いという上の命令のせいなんです。本当はデーテモの部屋に忍び込み暗殺する予定だったのですがね。辞めにします」
優しげな瞳がぎゅっと細まった。十字架型の二つの髪留めで抑えられた左目を覆い隠す金髪が、風でさらさらと靡く。
ちらりと覗く頬の刺青。
" 13 "
これってーーーーーー。
「僕は『13番目の裏切者』ユダ=サイモン。
貴女を幸せにするために、僕は彼を断罪します」
「でもお兄ちゃんは……」
「安心して。貴女は必ず幸せになる。貴女は強い。貴女は美しい。だから……どうか神を恨まないで」
「ーーはい」
不思議と心が静まっていくのがわかる。全てを彼に委ねてもいいと、その時彼女は思った。
「僕もこの言葉を言われて随分楽になりましたからね」
「うん……って君また私の心読んだでしょ!」
「あ、すみません。癖なもんで」
照れたように笑う彼に、緊急事態以外に考えを読むのはやめろと軽く注意を入れ空を見上げる。
光溢れる水色に思わず目を塞いだ。
「こんなに気持ちが良いのは久しぶりだな……」
「え? 何か言いました?」
「ううん。なんでも無い」
不思議そうに首を傾げながらも少年ーーサイモンは着々と戦闘準備を整えていく。黒く分厚い服を脱ぎ捨て中からあらわれたのは……。
「うわぁ……派手」
「五月蝿い! 好きで着てるわけじゃないんですからね(////)」
白いシャツの上に重ねられた、薄手の赤いコートに黒いブーツ。
胸元に留まった銀の十字架。
「なんか……神父さんみたい」
「そりゃあ、神父ですもの」
兄も十字架を身に付けていたことが思い出される。何をしていても脳裏に陰る兄の死という逃れられない事実、でももう終わりだ。サイモンが幸せにしてくれると誓ってくれた。もうすぐでお兄ちゃんに会える。
脱ぎ散らかした黒コートををまとめ、腰に結ぶと彼は歩き出した。
「善は急げ。行きますよ! デーテモのところに」
「はい!」
未来を切り開く。