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複雑・ファジー小説
- かみさま世界 (no.2) ( No.3 )
- 日時: 2012/06/05 18:06
- 名前: 六花 (ID: SEvijNFF)
*第一章
ようやく日の光が世界を照らし始め、鳥の鳴き声が遠くに聞こえる、そんな早朝。
とある町の神社には、人だかりができつつあった。
ざわざわとざわめく人々の話は、聞けば同じ内容だ。
ここの神社の巫女には、こころの穢れを祓い、清める能力がある。
————————それは、正真正銘本物だ、と。
「ほら、いらっしゃたわ!」
社の奥から、純白の浄衣に身を包んだ女性が出てくる。
長く、艶のある黒髪は後ろで高く結い上げられ、歩くたびに腰の鈴が清らかな音をたてる。
女性は、人々の前に来るとゆるやかに顔をあげ、——−微笑む。
そのさまは、まるで。
「め、女神様…」
誰かからそんな声がもれる。
女性は照れたようにはにかみ、それから口を開く。
「わたしの名は、神代結(かみしろゆい)。このお社の巫女でございます。この社に祀る、大神(おおかみ)の御力をおかりし、皆様の穢れを祓います」
凛としていて、それでいて優しい、そんな声音で巫女は言った。
それから奥の扉が開き、狩衣姿の壮年の男性と女性が出てきて、巫女に向かって軽くうなずく。
「それでは…まず、そこの方」
そう言って彼女は、近くにいた男性の側にひざまずき、額に手をかざす。
すると、あたたかな金色の光が男性を包み、少しすると弾けた。
男性は、信じられないような様子で体をこわばらせていたが、やがて穏やかに微笑み。
「なんだか軽くなったような気がするよ。からだも、こころも。…ありがとう」
巫女はかるくお辞儀をし、立ち上がる。
彼女の前には、すでに人々が連なっていた。
そしてそれは、段々と長いものになっていく。
それは、いつもの。
当たり前の光景だった。
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