複雑・ファジー小説

かみさま世界(no.3) ( No.7 )
日時: 2012/05/02 19:06
名前: 六花 (ID: UruhQZnK)

つかれた。

あたまがいたい。はきけがする。

純白の浄衣を脱ぎ捨て、ベッドに倒れこむ。
体中が痛んで、うまく息ができない。

巫女・神代結は、奇跡の力を持っている。自分で言うのもなんだが、それは本当だ。
しかし、人々の穢れを祓えば祓うほど、結の体にはその分痛みが返ってくる。



願いをかなえるためには、それ相応の代償が必要なのだ。



代償もなしで願いがかなえられるのは、それは。




かみさましかできないのだ。




手放そうとした意識を引き戻すかのように、ノックが響く。

「結ちゃん、いいかい?」
「はい…」

普段着に戻ったおばあさんが顔をのぞかせる。

「今日もお疲れ様だったねぇ、結ちゃん。あら…顔色が悪いんじゃないかね」
「うん、少し頭痛が、ね。でも大丈夫。寝れば治るから」
薄く笑って結が告げると、おばあさんは少し安心した様子だった。

「明日は大祓祭だけれど…無理はだめだよ。早くお休み」
「ありがとう」

言ってから、結はいたずらっぽく笑む。

「っていうと思った?明日の用意とかもあるでしょ。私も手伝う」
「でもねぇ…」
「大丈夫だってば。私はまだ若いんだから、ね」

おばあさんの言葉を遮るようにして言い、結は立ち上がる。

「本当に大丈夫なのかい?」
「もう…心配性だなあ、おばあさんは。ほら、行こう」




ちゃんと笑えているだろうか。声は震えていないだろうか。





いつも通りのわたしで、いられていますように。