複雑・ファジー小説

Re: かみさま世界[コメくださいっっ] ( No.17 )
日時: 2012/05/07 16:29
名前: 六花 (ID: qRt8qnz/)

結、と。声が聞こえた気がした。

『神代、結』

今度は、はっきりと、聞こえた。
低くて、落ち着いた、声。

周りを見渡すと、長身の男性がいた。
宵闇を切り取ったような髪と、服はこの美しい世界ではかえって浮いている。
遠目でよくわからないが、こちらを向いているように見える。


『焦るな』

頭の中に直接響く、声。
あんなに遠くにいるのに、声が聞こえるなんて。

『…その神社の結界の中にいれば、大丈夫だ』

何が、大丈夫なのか。
問おうにも、なぜか声が出ない。
必死に声を出そうとするが、やはり、出ない。


『焦るなと、言っているだろう…。じきに、全て、わかる』

唐突に体の力が抜け、まぶたが落ちる。
体が傾ぐ感覚がした。
地面にぶつかる衝撃はなく、どこまでもどこまでも落ちていく。
不思議と不安はなく、心はとても静かだ。



『神代結。…待っていろ。絶対に、結界からは出るな』


その声は、耳元で唸りを上げる風音にも負けず、結に届いた。





________________あなたは、誰?




一拍の間をおいてから、彼は答えた。

『しいて言うならば、夜神(よるかみ)。夜を司る、神』



________________夜、神。



風音が邪魔で、何も考えられない。

やがてその風音も止み、結は深い眠りに落ちた。