複雑・ファジー小説

Re: かみさま世界 ( No.36 )
日時: 2012/05/25 21:14
名前: 六花 (ID: 49hs5bxt)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode









これは。これは、まぎれもなく。









————————————神の、気配。










「あ、ねえねえ、そこのおばあちゃん。…ちょっといい?」



飄々とした、けれど、どこか威圧感に満ちた声音が耳朶を打つ。


ザクザクと、じゃりを踏む音が響く。



「————はい?」




落ち葉を掃く、ほうきの音が、やむ。












—————————————嫌な予感が、した。











「ねぇ、この神社にさ……神代結って子、いるでしょ?」

男は、低い声で問うた。





結の、黒目がちな大きな瞳が見開かれる。

本をつかむ手が無意識に震える。





神代結、と。その名を呼ばれたとたんに。





心臓を、冷たい手でわしづかみにされた気が、した。







「…えぇ…、あの子が、何か」



困惑したような、おばあさんの声が聞こえる。

対する男は、飄々とした感じを崩さずに、答えた。

「あぁ、うん。その子、有名な巫女なんだろう?お祓い…っていうの?してほしくて」



あぁ、そうでしたか、とおばあさんの緊張がとかれる。

「すみませんが、今日は終わってしまいまして…。明日、お越しください。よろしければ、ここにお名前を」



「…ここ?名前…ね…、そうだな」









————————————夜神、とでも。






ドクン、と。大きな音を立てて心臓が跳ねる。

凍り付いていた心臓が、今度は壊れそうなくらい激しく脈動する。


自分の鼓動がうるさくて、ほかに何も聞こえない。




————————————どうして、ここに。










ときが、止まったような気がした。