PR
複雑・ファジー小説
- Re: かみさま世界《参照400突破ぁ!!》 ( No.82 )
- 日時: 2012/07/18 22:01
- 名前: 六花 ◆6qjBq4Z8HU (ID: aFzuuCER)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
花々が咲き乱れ、木々は青々とした葉をうっそうと茂らせている。
一言でいえばとても美しい世界は、しかし、闇に包まれていた。
その中に、一人。たたずむ男がいた。
宵闇に似た衣をまとい、その存在は目を凝らさなければわからない。
「ね、あれで良かった?」
その闇に似つかわしくない声が、響く。
声の主は迷うことなくツカツカと、宵闇の男のほうへ歩み寄る。
「ねぇ、蓮夜」
蓮夜、と呼ばれた青年は不機嫌さを隠そうともしないで、振り向く。
燃え上がる炎のような紅蓮の瞳はすがめられ、けげんな表情だ。
「……あれで良いか、だと……?」
地を這うような低い声音で、彼が相当に怒っていることは容易にわかる。
「俺が言ったことを忘れたか……陽……?」
……怖い。
さすが、神。
……いや、俺もなんだけど、ね。
「質問に、答えろ。……忘れていたのか?」
「えー…っと。忘れてないです、はい」
陽がぎこちない笑みを浮かべてそう答えると、たたきつけられる神気が二倍になった。
この世界の何より冷たくて鋭い視線が、陽に突き刺さる。
大きなため息をついて、蓮夜は鬱陶しげに前髪をかき上げた。
「もう、いい。で、どうだった」
「ん」
一陣の風が吹く。それが、かすかな陽の溜息をかき消した。
「もう少しで限界が来ると思う。あの子、力を酷使しすぎだ」
夜を司る神は、その言葉に少しだけ目を細め、だが何も言わずに黙り込んだ。
やはり、か。
危惧はしていた。
夢で会ったあの時、あの、目。
何かを守ろうと必死な、愚かなほど強くまっすぐな目だった。
他人のために命すら懸けられるような。
まだ危うく、若い。
何にも穢されていない素直な光。
蓮夜はふっと顔を上げ、形の良い唇を動かした。
「行くぞ」
——————————待っていろ、神代結。
この世界の、唯一にして正統な後継者よ。
PR