複雑・ファジー小説
- Re: かみさま世界《参照400突破ぁ!!》 ( No.84 )
- 日時: 2012/09/02 12:29
- 名前: 六花 ◆6qjBq4Z8HU (ID: CwTdFiZy)
変わらない朝。
障子をあけることで入ってくる朝日のまぶしさや、澄んだ冷たい空気でさえも。
———————ただひとつ、変わるとするならば。
「……っう」
尋常でない疲労感にさいなまれていること。
頭の中で鐘が響いているような錯覚におそわれる。
二日酔いってこんなのかなぁ、なんて場違いな疑問も激しい頭痛にかき消された。
長く息をはきながら、部屋の壁にもたれかかる。
まだ結い上げていない長い黒髪が、サラリと顔にかかった。
目を閉じ呼吸を整えるように努力すると、少しだけ楽になった気がした。
代償の痛みは、消えたはずなのに。
……これは、なに。
「やぁ、結ちゃん。だいぶ辛そうだね?」
突然の声にはじかれたように顔を上げると、その衝撃で意識までもがとびそうになる。
「ちょ、ちょっと!大丈夫なの」
飄々した物言いが、一瞬で焦りを含んだ声音に変わる。
結の崩れかけた上体を声の主がとっさに支える。
薄く目を開くと、かすむ視界の中で色素の薄い橙の髪が揺れているのがみえた。
「は…陽、さ……?」
「うん、そうだよ。…ちょっと目、閉じてくれる?」
優しげにささやかれたそれは、しかし裏腹に従わざるを得ない迫力があった。
閉じたまぶたとひたいに触れる、暖かなぬくもり。
それが何かの文様をなぞるように動く。くすぐったくて身じろぐと、その動きが止まった。
「ん、いいよ」
ゆっくりまぶたを持ち上げると、さっきまでかすんでいた視界が鮮明に変わっていた。
驚いて陽を見つめると、彼は困ったように笑い、近くの座椅子に腰かけた。
「君の力は脳に過度な負担がかかるんだ。だから今その神経を麻痺させた。これで痛くないだろう?」
本当だ。
「……痛く、ない」
ハッとしたように結は息をのむ。
——————これって、代償の痛みがなくなった時と同じ。
やっぱり、あれを消したのも……。
視線に気づいた火神が、にっこりと笑った。