複雑・ファジー小説
- Re: 『いのち』が伝えるもの・・・。 『死を選んだその先に・・。』 ( No.20 )
- 日時: 2012/05/13 21:28
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: 『いのち』・・・それは伝えるもの。
-------------目の前に立っていたのは白いマントを羽織った人間・・・・?
身長は175cm程で、髪は短めのくせ毛で、色は黒。瞳の色は青。
こんなところに人が存在するのか?天国を支配する番人・・・といったところか。
『誰が天国と言った? ここはまだ天国ではない。』
・・・心が読まれた? さすが神様・・・ってとこか。
『お前はこの世界に愛想を尽かし、自分の命を投げ捨てた・・・間違いないな?』
・・・事情もよくご存知で。ああ、そうさ。この世界に希望も未練もない。
俺が生きていたところで、何にもないんだ。
ただ苦しみが増えるだけだ・・・。
『・・・・お前がここに来た理由が分かるか?』
・・・理由? 知るわけないだろ。知ったところで何か変わるわけでもあるまい。
『--------------ここに来れるのは二種類の人間・・・・・
世間で弱い立場に属しても、弱い立場の人間を守ろうとした人間。
またはどれほど苦しい思いをしても、それでも他人に対して優しい心を忘れなかった人間。
このような人間を、我々は「善人」と呼ぶ。』
・・・つまり俺はその「善人」とかいう奴なわけだ。
はッ、だからなんだよ。
お前らの言う「善人」はな、世界では損をする立場なんだ。
いくら良いように言ったところで、「善人」は決して良い存在じゃない。
・・・・無駄に悲しみを背負うだけの存在だからな。
『-------------否、そんなことは分かっている。
「善人」は人間の定義としては最も正しい存在であり、
世界を平和にする可能性を持つ、絶対に世界に必要な存在。
だがその優しさゆえに、世界では苦しい立場に属し、その苦しみに耐えきれず、
結果、「善人」はどんどん減っている。ゆえにこの「善人」、世界に一握りほどしかいない。』
・・・・何が言いたい? 俺にそんなことを話してなんになる?
『つまり・・・私はお前のような「善人」を守るための存在でもあるのだ。』
善人を・・・守る? 何から守るというのだ。
『-----------「善人」は世界の在り方を良く知る人間。ゆえに世界に失望し、生きる意味を見失い、
命を捨てる人間が多い。』
・・・まるで俺の事を言っているみたいだな。
確かにそうさ。この世界に希望なんてありはしない。
命を捨てることも当たり前と言えば当たり前だ。
『私は・・・・そのような人間が命を捨てるのを止めるために存在している。』
・・・・・止めるだと?
どうやって止めるというんだ? 説得でもするつもりか?
あいにくだが、俺の思いは変わらない。
生きていても仕方ないのはもう分かっているのだから。
『---------------では問おう、瀬谷幹也。お前の大切な人は・・・・・・お前の死を望んだのか?』
・・・俺の・・・・大切な人が・・・・?
・・・・はん、そんなの知るか。
彼女はもういない。彼女がどう思おうが・・・・俺には関係ない。
むしろ向こうで会えるんだ。彼女にとっても・・・それがいいはずさ。
『----------ここに「言霊」と呼ばれる、あの世とつながる通信機がある。
お前が今一番望む人とほんの少しだが、会話をすることが出来る。』
それは手のひらサイズのただのボール。こんなもので会話なんてできるのか?
・・・というか、俺は別に会話なんてしなくてもいい。分かっているんだ。
もう・・・・結果は・・・・・
『・・・・伝えなくていいのか?
伝えたかったことを・・・・お前の気持ちを。』
・・・・そうか。あれだけは伝えなければならない。
そもそも天国で絶対会えるとは限らない。今・・・・伝えておくのもいいかもな。
----------そうして、俺は言霊を手に取った・・・・・・。