複雑・ファジー小説
- Re: 『いのち』が伝えるもの・・・。 『Last エピソード。』 ( No.34 )
- 日時: 2012/06/23 14:17
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: 『いのち』・・・それは伝えるもの。
---------------私は元々…この世界の住人ではない。
・・・意外だっただろう? 私は別の世界から来た人間なのだ。
否・・・・『元』な。私は残念ながら生きていた頃の記憶がない。
だが確かに、生きていたという実感だけはあるのだ。なぜかは分からない。
現在の私には生きていたころの記憶はもちろんない。「思い出せない」と言うほうが正しいだろう。
--------------では、私が初めてここに来た時の事をお話しよう。
実は私よりも前に、ここに私と同じ仕事をしていた人間がいた。
否、人間かどうかは分からない。そもそも見ていないし、あったことがないのだから。
ただ、私の心に語りかけてきただけである。今考えれば、もしかしたらその人が神様だったのかもしれない。
皆様もご存知の通り、ここには一度死んだ善人だけが来ることが許される領域である。
そして何より、善人に生きるチャンスを与える場所でもある。
-------------私はここに連れてこられた・・・。それはつまり、私は死んだということだ。
てっきり私は生きたままここに連れられてきたと思いきや、現世で死んで、ここに連れてこられたようだ。
では、私は生き返るチャンスがあるのか? と、胸を膨らませたのはいいが、
・・・どうやらそうではないらしい。むしろ『逆』だ。
-----------------私は・・・神の代理に選ばれたのだ。元々ここにいた「先人」によって・・・。
そして任されたのだ。『この世界に生きる善人達を救ってくれ・・・』と。
・・・聞こえはいいかもしれないが、悪く言うとこういうことだ。
『貴方にも生きるチャンスはあるけど、善人を救うために、あえて犠牲になってくれ。』
・・・と、まぁこういうことだ。もう一言付け加えるなら、
私に『死んだままでいてくれ』と言っているようなものだ。
人助けは嫌いではない。むしろ好むことだ。
だけど生きるチャンスがあるなら、ここで無駄にしない手はない。むしろ受け取るべきだ。
----------------だが、残念ながら「強制」だった。
やるせない気持ちではあったが、覚悟を決めた。
ところで、「なぜ私なのか?」 と気になったので尋ねると、
『貴様が一番神に近い存在だからだ。』と、「先人」は答えた。
どういう意味かは分からなかったが、少なくとも「強制」なので、私に選択の余地はなかった。
出口もなく、戻る方法もない。たとえ出口があったとしても、生きていた頃の記憶のない。
私は一体どうすればいいのやら・・・・と頭を抱えたものだった。
--------------だが、さすがに一生閉じ込められるわけではない。それ相当の「報酬」があった。
一つ、『帰るべき世界に帰れる。』
二つ、『記憶を戻す。』
三つ、『一つ何でも願いが叶う。』
・・・と、いうことだそうだ。私にとっても十分な条件であった。
元の世界に戻るには、自分の今の状況を受け入れ、この仕事に全身全霊を注ぎ込む事が条件。やり遂げれば、記憶も元に戻る。
・・・・だったらやるしかない。それでしか全てを取り戻す方法がないのだから。
いつになるかは分からない。そもそもどうすれば解放してくれるのか分からないが・・・
やれることを・・・やるしかないのだ。
-------------------だから私は…神の代理になったのだ。