複雑・ファジー小説

Re: 記憶のカケラ (2) ( No.8 )
日時: 2012/05/09 18:28
名前: 雷羅 (ID: 45QnB5qh)


 「でかいな」
 屋敷はとても古くボロボロだったが、大きかった。
 周りを塀に囲まれており、高さは身長180cmの俺より少し高い
 ———2m位だろうか。
 塀の周りを一周してみたが門らしきモノは無かった。

 まるで人が入るのを拒絶するように。

 「…本当に屋敷なのか?」
 門が無い屋敷など聞いたことも、見たことも無かった。
 「ふぅ。——仕方ない、な」

 少し離れた所から走り出し、塀に手を掛け軽々と飛び越える。
 「よし———…いっ!!」
 着地したと同時に頭が激しく痛んだ。
 「そういえば、頭怪我してたな」
 頭を軽く触る。
 「さすがにあの数は無理があったか…」
 ため息を吐きながら、目の前の扉を開ける。

 「ん?」
 外とは違い、中はとても綺麗だった。
 とても静かで物音1つとない。

 人の気配がするのに、人は居ない。
 人が居るのに、物音がしない。
 まるで、

 ———時が止まっているかのように。

 此処は何処かが、おかしい。

 そう思った瞬間、言いようの無い恐怖が襲ってきた。
 頭の中で警報が鳴り響く。
 中に入るのを、体が拒絶している。

 だが、それに逆らいながら足を一歩、一歩踏み入れた。