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複雑・ファジー小説
- Re: 記憶のカケラ 【参照600突破!!】 ( No.121 )
- 日時: 2012/09/03 22:19
- 名前: 雷羅 (ID: J0KoWDkF)
気が付くと、私は暗闇の中にいた。
周りには誰も居ない。
地面に足がついている感覚がしない。
ふわふわと浮かんでいるような気分になる。
「…………」
辺りを見渡すが何も見えない。
ただ、ただ暗闇が続くだけ。
「 ラ」
ふいに、優しい女の人の声が響く。
声のした方をむく。
とある、黒髪の小柄な女の人が立っていた。
「 ラ、おいで」
次に同じく優しい響きをもった、男の人の声が聞こえた。
いつの間にか、背の高い金髪の男の人が女の人の横に立っていた。
その顔は霧が掛かっているかのように曖昧だ。
顔立ちも、表情も何一つとして分からない。
だが、きっと彼らは柔らかな笑顔を浮べている。
そんな気がした。
「「 ラ、おいで」」
二人の声が重なる。
誰かを呼んでいる。
何度耳を澄ましても、誰かの名前だけは聞き取れない。
何故か、胸の奥が締め付けられた気がした。
「……っふぅ………っ」
息が上手く出来ない。
何かが、私の頬を伝う。
暗闇に音も無く、落ちた雫は消え失せた。
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