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複雑・ファジー小説
- Re: 記憶のカケラ 【扉絵描いてみました】 ( No.144 )
- 日時: 2012/09/19 22:00
- 名前: 雷羅 (ID: Lk0URTLS)
- 参照: http://mb1.net4u.org/bbs/kakiko01/image/697jpg.html
拾ってきた二つの剣を操りながら、俺は考えをめぐらせていた。
物心付く前から俺はある目的のためだけに強くなろうとしていた。
世界を滅ぼせれるほどに強くなれと。
化け物を殺せるほどに強くなれと。
そう言われ続け俺は生きてきた。
たった一つの化け物を殺すためだけに。
それが全てで、空っぽな俺にはそれしかなかった。
俺が願ったことは一度も無かったけど。
強い者でいることが、生きる意味だった。
俺はそれを信じて疑うことはしなかった。
———ブウゥンッ!!!
剣が風を切る。
剣を振るう手が激しくなる。
けれど俺は疑問を抱いてしまった。
俺のやっている事は本当に正しいのかと。
とてつもなく大切な何かを裏切っているような気がした。
大きな間違いを繰り返しているような、そんな気がして堪らなかった。
自分を疑い。
世界を疑い。
全てを疑った。
そして俺は、自由を望みそこから逃げ出した。
全てを放棄し、俺は『俺』である事をやめた。
自由になったはずだった。
自由になれたはずだった。
「………っ!!」
そこまで考え俺は、動きを止めた。
俺の手からするりと剣は落ち、甲高い音を立てながら地面に付き刺さった。
それならば、何故俺は強くなろうとしているのだろうか。
逃げ出した俺は、自由になった俺は強くなる事は必要ないのに。
「…………ッフ」
口元から自身を自傷する笑いが零れた。
結局何も変わらないのだ。
逃げ出しても。
関係ないと言い張っても。
過去からはどう足掻いても、逃れられないのだ。
俺は未だに、逃れられないでいる。
長年で染み付いた『それ』からは逃れられなれない。
今もまだ俺を支配している。
「…………?」
ふと視線を感じた。
地べたに座り込んでいるライラが目に入った。
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