複雑・ファジー小説
- Re: 記憶のカケラ 【久しぶりの更新…】 ( No.149 )
- 日時: 2012/11/28 00:03
- 名前: 雷羅 (ID: sb4c5jj4)
ドアノブに手を掛け、ドアを開ける。
「ライラ、……っと。寝てる、のか?」
部屋に入り、ベットに寝転んでいるライラに声をかける。寝ているらしく、返答は無い。小さな寝息だけが聞こえる。
ぎしりと、ベットに腰をかける。
「はぁ……」
ため息を吐き出し、まったく、どうして自分はこうなのかと。後悔する。今思えば、全てが間違いだった。
バラス———あの、女好きの情報屋———にライラのことを教えたことも。
あのぶつかった少年達2人の正体に、すぐ気が付かなかったことも。
ライラと会ったあの日から、数日が経過していた。
ライラはあの『闇使い』で、この世界全てから命を狙われている。
そして、ライラはその事を知らない。
静かに眠る、ライラに目線を落とす。
「………・・・なぁ、ライラ。もし、さ」
ライラの返答は勿論無い。それを確認して、声を吐き出す。
「——————……もし、お前が死んだらさ」
「それはきっと、俺のせいだよな」
顔を顰め、ぽつりと呟く。そして、僅かに口元を歪ませる。
何を馬鹿なことを言っているのかと、自分を笑う。
「ん…・・・」
次の瞬間、ライラが小さく息を漏らす。
「……ん、んっ。———フレ、ア…」
数回のどを鳴らし、目をこすった。俺の名前を呼び、手をゆっくりと動かす。何かを捜しているのか、ベットの中をもぞもぞと彷徨う。困惑しながらそれを眺めていると、ぴたりと手は止まった。そして、いきなりくんっと、服の裾を引っ張った。
「……っ!!」
その予想外のライラの行動に驚く。
「フレア……、おは、よう……」
ライラは俺の反応に気が付いていないらしい。寝ぼけているのか、途切れ途切れになりながら、声を出した。
「あ、あぁ……」
ふらふらしながら、ライラは頼りない様子で起き上がった。眠たそうに目をこする。何かに気が付いたのか、きょろきょろとし始めた。そして、くんくんと周りのにおいをかいだ。
「いい、においがす、る」
小さく呟くと、カタリと首を傾げた。
「あぁ、そうだった。———食いもん、買ってきたんだ。腹減ってんじゃないのかと思ってな」
食べ物の入った紙袋を小さくふり、ライラに見せた。ライラに手渡すと、すぐに紙袋を開いて、食べ物を取り出す。パンをながめ、はむっと小さく齧る。
いつも道理、無表情で食べている。だが、パンを食べるその姿は、歳相応の愛らしさがある。
ライラは、よく眠り、よく食べる。人並み以上に。
それは、ライラの記憶が無い事、ライラが『闇使い』であることに関係しているのだろうか。
ただ、その姿を見る限り、ライラが『闇使い』であると。俺は信じる事が出来なかった。
そうして、俺は口を開く。
「なあ、ライラ。お前って本当に『闇使い』なのか?」
「……そう、書いてあった、からな。そうなんじゃない、のか」
俺の今更な疑問に、暫く沈黙してからライラは答えた。
いつの間にか、ライラに渡した食べ物は全て無くなっていた。
口に出してみると、次々に疑問が生まれる。
考えてみれば、すぐに気付くはずだ。ライラが『闇使い』だと言う証拠も無い。リボンに書いてあるからと言って、それが本当だとは限らない。
「ライラ、ちょっといいか?」
「……何をするんだ?」
確かめてみればいい。
ライラが『闇使い』ならば、体の何処かに刻印があるはずだ。
ライラを押し倒す。
「………」
「いや、悪い…。あの、別に、変なことじゃねぇからっ」
ライラが黙っている事に不安を覚え、とっさに言葉を吐き出す。ライラの顔をちらりと、窺った。
怒っているのかと思ったが、そうでも無いらしい。いつも道理の無表情で、首を傾げている。
ライラの服をめくると、白いライラの肌がさらされた。それに目を奪われながら、ライラの服をさらに脱がしていく。
どうか、嘘であってくれ、と願う。
刻印が無ければそれでいい。それですべて、無事に終る。
「っ……!!」
ライラの胸元がさらされた時、俺は息を飲んだ。
ライラの真っ白な肌に、黒い何かが見えた。それは、————『闇使い』の刻印だった。
十字架が囚われているような真っ黒な刻印が丁度、ライラの心臓の位置に刻まれている。
「フレア、これは……」
ライラは刻印を抑えながら、問う。
「これは、『闇使い』の刻印だ。—————これで、本当にライラが『闇使い』だって分かった、な」
知りたくも無い事実を、知ってしまった。
本当に俺は、無駄な事しかしない。
「……悪い」
ライラから顔を逸らし、ベットに座りなおす。ため息を吐く。
「……」
服をすばやく着なおすと、ライラは静かに俺を見つめた。目を伏せ、再び俺を見た。
そこで何かを言おうとする。だが———
———ゴゴゴッ、ガシャアァンッ!!!!!!
「っ、なんだ!!」
突然、地響きのような音が響いた。その後、辺りがグラグラと揺れ、何かが崩れた。
すぐ近くだ。
俺とライラは、すぐさま部屋から飛び出た。
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フレアさんが変態すぎてすみません。
最後の効果音が分からなかった。