複雑・ファジー小説

Re: 記憶のカケラ ( No.17 )
日時: 2012/05/28 18:58
名前: 雷羅 (ID: 01wfR6nM)

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『これはただの自己満足。
 こんなことを書いても決して何も変わることなど無い。

 けれど、私は耐えられないのだ。

 自分の犯した罪の重さに。

 私はいったい何時から間違えていたのだろう。


 嗚呼、再び貴方に会えたなら……』

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『私は大きくて、小さな檻の中に閉じ込められていた。

 この檻は私独りでは大きくて。
 世界から見れば小さくて。

 檻の中は自由だったけど、自由ではなくて。
 見えない鎖に繋げられていた。

 外に出る事など許されず、誰かに会う事さえも許されなかった。
 とても寂しくて、哀しくて…。


 そして私はいつしか、外に出たいと、誰かに会いたいと願うようにな った。


 ———けれども、外の世界を知らない私に何が出来るのかと…。

 結局私は無力で、何も出来なくて。

 そんな願いすら叶えられなかった。


 いや、私は叶えようとしなかったのだ。

 嫌われる事を恐れ。

 自分の身を守るために。


 誰にも愛されていない私は、生きている意味があるのだろうか。

 こんな私など死んでいることも、同然だ。


 私は人に恐れられ、闇の中でずっと独りで生きていくしかないのだ。
 それが私に与えられた使命であり、逆らうことの出来ない運命なのだ。


 けれど—…、だけど…。

 誰かが私を。

 愛してくれるのなら。

 それなら、私も、


 ————生きていて良いのだろうか…』

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誰かの幼い字で書かれていたものは、そこで終わっていた。
後は白紙が続いていた。

誰かの日記だろうか。
哀しみ、不安、希望…さまざまな想いが込められたいた。


突然、字が滲みだした。
何処からか水が落ちてきた。

それが、自分の涙だと気付くのに時間が掛かった。
「あれ……?な、んで泣いてんだ…?」
なぜ自分が泣いているのか分からなかった。

「ハ、ハハハ……おかしい」
こう言う感情は、捨てたはずなのに。
全て…、あの時に。

「ハッ、ハハハハハ———ッ…!!」
俺は本を抱えたまま、泣き出した。