複雑・ファジー小説

Re: 記憶のカケラ ( No.28 )
日時: 2012/05/29 05:58
名前: 雷羅 (ID: 01wfR6nM)

「まぁ、忘れるくらいなら、そこまで重要じゃないことか…。んっ、そういえば」
少女を見ると再び、小さな寝息をたてていた。

「…さっき、泣いてた、よな」
だが、少女の顔に涙の痕は無い。

「俺の見間違い…?」

でも確かに泣いていた。
俺はちゃんとこの目で—…

少女の顔を覗き込んでみると、ゆっくりと瞼を開いた。
何度か瞬きをすると、少女は体を起こした。
辺りを見渡し、俺に視線を移した。

「………」

「………」

長い沈黙が、続いた。

どうしたらいいのだろうか。
俺は今まで、まともに人と話した事が無いのだ。

「………」

「……よ?」

「………」

再び長く重い沈黙が続いた。


だが、その沈黙を破ったのは少女の方だった。

少女はベッドから降りて、俺を見上げる。
こうして見ると、本当に少女は小さかった。

腰まである綺麗な金髪。
前髪も長く、目に少しかかっている。
つり目の目は髪と同じ金色だ。
身長は俺より30cmくらい低い、150cm中盤だろうか。


その姿は、とても美しい人形のよう。


そんな少女はゆっくりと、少女は口を開いた。

「お前は、誰だ」

その声は感情の無い、機械のようだ。

「俺、か?俺は—…」

少女の問いに俺は戸惑う。
俺に名前なんか———

ある訳が無い。

今まで一度も名前を付けられた事など、ない。
俺に名前なんて、必要なかったから。

「誰だ、お前は」
少女に再び問われた。

「俺は——いや、おれはフレア・フェルゴ。16だ!よろしくな!!」

今までの俺は捨てよう。
どんなに時間が、掛かっても。