PR
複雑・ファジー小説
- Re: 記憶のカケラ ( No.36 )
- 日時: 2012/05/28 18:45
- 名前: 雷羅 (ID: 01wfR6nM)
「で、お前の名前は?」
目の前のベッドに座っているフレアという少年に聞かれた。
「私の、名前、か———…」
私に名前。
私の名前。
「ん?どうかしたか?」
「分からない。私の、名前」
「は…?いや、それって…覚えてないって事か?」
驚いている、のだろうか。
フレアは目を少し見開いた。
「あぁ、名前、だけじゃない。何故此処に、いるのか、此処は一体、何処なのかさえ、私は———…」
何一つとして、覚えていない。
「分からない」
「——て事は、記憶喪失……なのか?」
フレアは口に手を当てながらそう、呟いた。
記憶喪失。
やっぱり、そうなのだろうか。
頭に靄がかかっている。
「でも—、名前無かったら不便、だよな。——なんか名前書いてあるもんないか…?あっ、この本お前の?」
フレアは、手に持っていた黒い本を差し出す。
「見たことが、あるような気がする…。でも、分からない」
「そうか。んー。名前書いてねーなぁ」
パラパラと、本をめくる。
———ズキリ。
頭に少し衝撃がはしった。
これが、【痛い】という事なのだろうか。
軽く右手で頭に、触れる。
目の端にチラリと、赤いものが目に入った。
右手を見てみると、手首に赤いリボンが、巻きついていた。
「なぁ、フレア。これは何だ?」
フレアに右手を見せる。
「ん?……おぉっ!これお前の名前じゃねーかっ!!」
「そう、なのか」
其処には
ライラック・リル 14歳 『闇使い』
と、書いてあった。
PR