複雑・ファジー小説

Re: 記憶のカケラ 【第2章無理やり(?)完結】 ( No.76 )
日時: 2012/06/19 18:32
名前: 雷羅 (ID: vkOByh3G)

バラスに本を投げた。
見事に当たり、バラスは机に突っ伏した。

…誰かがいる。
バラスで隠れていて見えなかったが、目の前に誰かが立っていた。


そこには、見慣れた顔があった。

長身と長さが少しばらばらで、ボサボサの赤い髪が特徴的な少年だ。

今まで、名前が無かった。
だが、今は新しい名前を自分で付けたらしい。

その事に私は、嬉しく思う。
これまで名前が無くても良い。と言っていた少年。
その少年は色々な事を経験してきた。

そして、この世界に絶望していた。
16と言うその歳で、世界に絶望するには早すぎる。


でも今は、少し明るくなった。
まだ暗い印象が残っている。
だが、このまま年相応の明るさを取り戻してくれれば良いと思う。


自分だ付けた名前は、確か…


「フレア、さん?」

「よっ」

「お久ぶり、ですよね」

此処しばらく会っていなかったはずだ。
フレアに笑いかける。

「…にしても、やっぱあんたも知ってたんだな」
名前の事を指すのだろう。


「えぇ。一応あれでもバラスは情報屋ですし。私は、助手ですから…と、言いたい所なんですがね」
大きな、心の底からのため息を吐く。

「一応って、酷いなぁ。ちゃんと言ってくれたって良いと思うんだけどねぇ」
起き上がったバラスが言う。

「何を言っているんですか?あなたは、見てくれだけの情報屋です。実際、私が魔法を使って情報を集めているじゃ、ないですか」
すかさず、私は正論を言う。


「ハ、ハハッ。痛いとこ付くねぇ!」
バラスは笑って答える。

完璧な苦笑いだが。


「へー。ルーアが情報集めてんのか」
フレアが驚いた様な声を、上げる。

「知りませんでしたか?」
「あぁ。まったく」

「私は『風使い』なので、情報収集に長けているんです。バラスと会ってから、色々あって情報屋をする事になったのですが…」

ふと、フレアを見ると、以外に話に食いついていた。

「色々って?」
「教えません。こんな話は置いといて—…あら?そちらの方は?」

フレアの後ろに、誰かが隠れていた。
私とあまり変わらないほどの、小柄な少女だ。