複雑・ファジー小説
- Re: 記憶のカケラ 【第3章更新中】 ( No.93 )
- 日時: 2012/07/09 17:43
- 名前: 雷羅 (ID: mlAvlERx)
「幻術…それは、この世界の者の誰も使えない。まぁ、分かりやすく言うと————禁術って言うのかな?」
へらりと締まらない笑みを浮べてみる。
ライラとフレアは大人しく、話を聞いている。
「でも、唯一使える人が居るんだ。唯、1人…ね」
頬杖をついた手を解く。
そしてゆっくり、指をさす。
「それが君だよ。……ライラ君?」
ライラを。
「私…か。でも、私は何もしていない」
はっきりとライラは答える。
「うん。だろうねぇ」
「おいっ。何で、俺達には効かなかったんだ?」
フレアは眉間にしわを寄せる。
理解できていないようだ。
相変わらず、世界の事に興味を示していない。
苦笑いを浮べる。
「落ち着いて、ちゃんと説明するから。ルーア君が」
「はぁ。やはり、私ですか」
予測していたのか、そんな事を呟いた。
「では、バラスがまったく!!役に立たないので、私が説明いたします」
明らかに、まったくを強調した。
「酷いなぁ〜。それなりに役に立ってると思うんだけどねぇ」
そんな呟きはあっけなく、無視された。
「先ほどバラスが言ったように、恐らくアレは幻術でしょう。そして、私に幻術をかけたのは、ライラさんです。———1つ、確認したいのですが…ライラさんは『闇使い』ですか?」
強張った声で問いかけられる。
「うん。そーだよ」
「……そうですか。バラス、そういう事は早く言ってください」
息を呑んだように、ルーアは驚く。
「ハハ。ごめん、ごめん」
へにゃりと笑いながら軽く答える。
その答え方に、ルーアは呆れる。
「もう、いいです。……それで、幻術が使えるのは『闇使い』である、ライラさんだけです。つまり、『闇使い』にしか使えない、と言う事です。————その幻術が私しか効かなかったのは、貴方たちが人間だからでしょう」
そこから、ルーアの言葉を引き継いだ。
「多分、ルーア君が見たのはライラ君本来の姿。だから、ライラ君自身には覚えがなかった。さらに、魔法使いであるルーア君は感じ取ることが出来た。だけど、人間である僕達は感じ取る事が出来なっかた。———まぁ、そんなとかな?」
「バラス、最後の最後でやるなら、最初からやってください」
鋭い視線で睨まれる。
「いや〜、だって。僕より、ルーア君の方が説明上手いし?その方が、早いじゃない?」
何より、メンドクサイし?
「さらりと、本音を出さないで下さい。……フレアさん、ライラさん分かりましたか?」
「あぁ」
「一応な」
二人が理解したのを確認してから、ルーアはこちらを向いた。
「この際ですから、『闇使い』ついての他の情報をお教えしても宜しいですか?」
「うん。そーだねぇ。……『闇使い』についてだね?ルーア君、宜しく」
「はい」
ルーアは頷き、奥の扉に消えていく。
「ああ」
フレアは真剣な顔で頷く。
人のことにこれだけ真剣になれるとはね。
ふふ、面白いねぇ。
「…何笑ってやがる」
怪訝な顔をする。
「いや、気にしないでいいよ?」
「うんくせぇ」
「まぁまぁ、座って。お茶でも飲むかい?」
立ち上がり、ライラとフレアの前に紅茶を出す。
「…ありがとう」
「毒とか入ってないか?」
ライラはお礼を言い、フレアは嫌そうな顔で紅茶を覗き込む。
「入れるわけないでしょ」
苦笑いで答える。
「ごほん。…じゃあ、初めてのライラ君の居る事だし、ルーア君を待ってる間に、此処の説明しようか」
咳払いをして、頬杖を突く。